第2話
「おい、そこのやつ」
不意に後ろから声をかけられた。
振り向くと如何にもチャラそうな男4人がいた。
こういう人たちは苦手だ。だいたいこういう
「たいした用じゃねえんだよ。ただ、ちょと金を使いすぎてな。だからさ、ねえ、分かるでしょ?気がきいたら見逃してあげるからさぁ」
「い、いや…… いまはお金もってないので……」
いままで喝上げされたことがなかったためどもってしまった。
いや、普通だったらこうなるよね。急に声をかけられたらどもることだってあるって。しかも人数も1対4だし……
誰に対して言い訳をしているのかわからないが心の中でしておく。
「面白いフードをしてると思ったら女だったのか」
フードを深く被っていたため顔が見えずどんな奴だかわかっていなかった。ただ見た感じ小さそうだったため簡単に金をとる事が出来ると思い話しかけたが玄の声を聞いて女性だと判断した不良達は次の行動を取る。
「じゃあ、お金がないなら。ちょっと俺らと遊ばない? バイトだと思ってさ」
玄は目を合わせるのが怖いため下を向いていたが全身を舐めまわされるような得体のしれない恐怖を覚えた。
「い、いえ…… 結構です。これから学校があるので……」
「学校なんてさぼっちゃってさ。どうせこの時間だったら遅刻確定でしょ」
男達は玄を囲うようにじりじりと近寄ってくる。
気持ち悪い、怖い、逃げないと……
「何をしているのですか!」
凛と澄んだ声が裏路地に響く。
声のする方向へ視線を向けると1人の女の子が立っていた。黒く艶のある髪は背中まで伸び動くとさらさらと輝いて見える。黒目は少し吊り上がりキリっとしている。いわゆる美少女である。
「その
男達は最初はむかついたが、少女の顔を見て可愛いかったため少し考え言う。
「この娘と今から遊びに行くところだ、君も来るか? 寂しくて声を掛けてきたんだろ?」
「誰が貴方達と遊びに行きますか! 行きましょ!」
玄は少女に腕を捕まれ引っ張られる。突然の事で驚いたが助けてくれたのでおとなしく付いていこうとする。それを男達がゆるはずもなく玄の肩を掴む。
「おいおい、どこ行くんだ? 勝手に連れていくなよ」
玄は振るほどこうとしたが男はがっちりと掴んでいるため離れない。
「嫌がっているじゃありませんか! 離しなさい!」
「分かった。じゃあ、こいつの代わりにお前でいいや。顔はいいしな」
男は玄の代わりに少女を捕まえることにした。
「えっ……い、いや!」
少女は突然標的が自分になったため驚き悲鳴を上げる。
少女を捕まえるために玄の肩を掴んでいる手が離れた。一時的だが二人ともが誰にもつかまれていない状態になった。このチャンスを逃してなるものか。玄は掴んでいた男に蹴りを入れる。
「いっ、て、てめぇ!」
丁度、男の急所に当たりうずくまる。
「こっち!」
怯んでいる隙に少女の手を取り走る。後ろを見ると男2人が追いかけてくる。
「おい! まてこら!」
「ふざけんじゃねぇぞ!」
玄と少女は走り疲れた体を休めるため地べたに座り呼吸を整える様に大きく深呼吸をする。
「どこ行きやがった」
「っち、次会ったらただじゃおかねぇ」
追ってきた男たちが諦める声が聞こえる。撒く事ができたようだ。
「はぁ、はぁ、諦めたみたいだな」
「はぁ、はぁ、そうですね」
「ごめん。巻き込んじゃって」
「いえ、私が見過ごせず介入したまでなので。それに、何にも解決できず逃げるときに足手まといにもなってしまいましたし……」
「ううん、ありがと、えっと……」
「あ、自己紹介がまだでしたね。私は
桜木…… どこかで聞いたことのある名前だな。って、あぁ、自己紹介だな。
「俺は黒井玄、敬語じゃなくていいよ」
「え、えぇ。わかった、……私のこと、碧ってよんで?」
「わかった。俺の事も玄でいいよ。それと、頼みたいことがあるんだ」
「えぇ、なに?」
「白羽野高校へ行きたいんだけど道分かる?」
「あなたも白羽野高校なの? 道に迷ったって事は一年生よね。一緒の学年ね」
「学校までの道を教えてくれない?」
「えぇ、いいわ、それじゃあ、さっきみたいなことが起きないよう大通りを通りましょ」
「そうだな、でもよかったぁ。碧がいてくれて、俺一人だったら学校までたどり着けなかったよ」
「ふふふ、それじゃあ、行きましょう」
息も整い大通りに出た玄と碧は学校を目指して歩く。
「玄はどうしてあの道にいたの?」
「遅刻すると思って近道しようとしたら絡まれた」
「急がば回れね」
「本当にな、俺のせいで碧も遅刻にさせちゃってごめん」
「大丈夫よ、何もなくても間に合わなかったと思うから。あっ、もう学校が見えたわ」
玄は片手で数えるくらいしか来ていないため校舎を見るととても圧倒される。
私立である白羽野高校は高校の門とは思えない大きな門が見える。そしてその奥には綺麗な校舎が建っている。
その門を二人はくぐり中に入っていく。
遅刻をしてきた二人は誰もいない昇降口に貼られた紙を見ている。その紙にはたくさんの名前が書かれており一番上には学年と組が書かれている。
二人は一学年のクラス表を見て喜んだ。1年2組の名前に黒井玄その少し下に桜木碧と名前が記されてあった。
「一緒のクラスになってよかったわ」
「そうだな、中学の友達は誰もこの高校にいないし、知り合いがいないのは心細かったよ」
一緒のクラスになった喜びを語り合い、昇降口を入り1年2組の教室へ入る。教室に入るがそこには玄と碧いがい誰もいない。
「誰もいないわね」
「いまは始業式をやってるからな、さすがに遅れて式典には参加したくないし」
「そうね、始業式が終わるまでここで待っていましょう」
座る席が決まっているのか知らないが教室の窓側の後ろの席に二人は縦に並んで座る。
「教室はあったかいなぁ」
ヒーターがあるのかポカポカしていた。フードを取り言う。
不意に碧は玄にキスをしてしまうのでないかというほどの距離まで近づき頬に手を添えて呟く。
「玄の髪って綺麗ね。顔もとても可愛らしい……」
玄は女の子にこんな接近されて顔を触られたことなどなかったため少し、いやとてもどきどきした。
「み、碧の方が綺麗だよ。髪もさらさらで艶もあるし」
焦ったため少し変なことを口走った気がしたが…
「うふふ、ありがと」
嬉しそうだったので良しとしよう。
二人は始業式が終わるまで世間話する。20分ほどしたら廊下から足音がたくさん聞こえてきた。どうやら始業式が終わったようだ。教室の後ろのドアが開かれる。
『ガラッ』
「あはは! なんだよそれ! ……あっ」
廊下を走ってきた中学からの気が知れた二人組の男子生徒はクラスの皆よりいち早く教室に付いたそして、一番初めに入ってきた男子生徒の声が聞こえる。初めに入ってきた男子生徒が急に止まったため後ろの男子生徒は迷惑そうに言う。
「おい、ドアの前で止まるなよ ……どうした?」
「か、可愛い……」
何を言っているんだ。そういう風に言う。
「は? 何を言ってんだ。早く入れよ」
「………」
未だ固まっている友達が何を見たのか気になったためクラスの中を覗く。
「何を見た? ……っ!」
覗き込んだ男は何を見て固まっているのか理解した。教室の片隅に二人の美少女が戯れている。窓から差し込む光がどこか儚く幻想的な雰囲気を醸し出している。人生で初めて見惚れる。そして同じようにドアの前で停止した。
少し遅れてやってきたクラスの皆はドアの前で止まっている二人を発見する。中学時代の知り合いでい限り今始まったばかりの高校時代で友達などいるはずもない。ドアの前で止まっている二人にはクラスメイトに知り合いはいなかった。そのためクラスメイトが二人を発見したが皆が初対面なため話すのをためらっている。
「どうしたのかしら?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます