第5節 昼休み
昼飯を食って、俺は早速クラスの連中と一緒に校庭に向かった。
覚悟してなかったワケじゃねえが、皆がやたらと俺の前の学校に興味もってるのがめんどくセェ。とりあえず適当に誤魔化してるつもりだけど、俺は頭良くねえから嘘つき通せるか不安だ。……まぁそれでも何とかやらねぇと、亜久津と名乗るあの人に殺されそうな気がする。
「よし、じゃあ軽く練習してみよっか!」
クラスの男子に言われて、取り合えずバットを振るところから始めることになった。
要は飛んでくるタマを打ち返せば良いんだろ。簡単簡単……。
「オラァッ!!」
気合いを入れてバットを振ると、ボールは遥か彼方へ飛んでいった。
「すごいよ周防くん!」
剱持が真っ先に声をかけてきた。
「そ、そうかな?」
「球にあたるだけでもすごいって!」
「でも今掛け声めっちゃ野太かったような……ま良いか!」
クラスの連中が一斉に声をかけてくる。こそばゆいが悪い気はしない。
その後の守備や送球も特に問題なかった。人を殴ることに明け暮れていた俺だが、どうやら運動神経は良いらしい。しかし、キャッチャーのハンドサインってやつがどうも覚えられそうにないので、ピッチャーは別の奴に頼むことにした。周防くんメガネかけてるのに意外とか言ってるやつがいてぶっ飛ばしてやろうかと思ったがグッとこらえた。
「おい、昼休み終わるぞ!」
誰かが言って、みんなで慌てて教室に向かい始める。そうか、みんなチャイムとか気にするんだな……それがカタギってもんだよな。
俺も教室に戻ろうとした途中で、誰かと肩ががぶつかった。振り返ると知らないやつだった。
「あっ、ごめんね!」
それだけ言って、そいつは走り去っていく。……いい度胸してやがるなテメェ……。
無意識のうちにバットを振りかぶっていた自分にハッとした。
「……! やっべぇ、パンピーは肩ぶつけただけで喧嘩しねえんだった…!!」
「周防くん、何してるの? 早く戻ろうよ」
先に行っていたはずの剣持が、俺に声をかけてきた。わざわざ戻ってきてくれたのか、いいやつだなこいつ。
よし、がんばれ俺。とにかく最初は我慢だ。慣れてくればきっとみんなと同じようになれるはずだ……!!
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