第1節 元ヤンの前世はスライムでした

 俺の名前は周防来夢(すおう らいむ)

 中学から喧嘩に明け暮れていた俺は、地元の高校で1年生ながら周りの敵をすべてぶっ潰し、総長となって、地元では爆音を鳴らしながらバイクを乗り回したり、気に入らないことがあるとすぐ他人に喧嘩を吹っ掛けたり校舎を壊したりしていた。暴力で周りを支配したような気分に酔っていた。

 しかし、とある喧嘩中、後ろからバットで撲られ、意識を失って病院に運ばれていく間に、俺は前世の夢を見た。

 そこで、俺の前世は、異世界にある魔界に住む、下級魔族のスライムであったこと

そして、そこではいつも上流魔族や人間どもに力任せに虐められ、力による支配を憎んでいたことを急に思い出した。

 自分が最も憎んでいた、暴力で支配する側に立っていたと気付いた俺は猛省し、足を洗い、親に頼み込んで竜胆学園に編入した。

 これからは真面目に生きるんだ!!

「君が転校生の周防君だね。担任の坂谷だよ、よろしく。」

 坂谷(さかや)という教師に案内され、俺は二年生の教室の前に立つ。ここには俺の過去を知る奴はいねぇ。今日から俺は、暴力を使わない方法で周りとうまくやりながら、一般人として生きるんだ。

「みんな良い奴だからね、周防君もすぐに馴染めると思うよ。」

 そう言って坂谷センセイが教室の扉を開ける。

 あぁ、これから俺の第二の人生が始まるんだ、しっかりしろよ俺……!

 緊張しながら、ちらっと中の様子を伺った時、一人の女子と目が合った。

「……………………………。」

思わず扉を締める

「す、周防くん、どうした!?」

 嫌アアアアアアアァ!!

 なんであの人がここにいるのオオオオオオおおお!?

 魔王の側近だった人じゃんんんんんん!

 いや、でもそんなわけねぇよな、見間違いだ見間違い……。

「どうしたの、どこか具合でも悪い?」

 坂谷センセイが心配して声をかけてくる。

「す、すんません。知り合いがいたような気がしてびっくりしちゃって……でも、たぶん見間違いッス」

「そうかい? じゃあ、入るからね。」

 改めて扉が開き、教室へと入る。

「えー、今日からこのクラスに編入することになった、周防来夢くんだ。みんな仲良くするんだぞー」

 落ち着け、俺。きっと他人のそら似だ。

 それに、仮にあれが魔王の側近のあの人が転生した姿だったとしても、向こうだって俺のことなんか忘れてるはず……

 って、めっちゃ睨んでるううううううう

 なんで!? 俺、前世で何かしましたっけ? あなた様には近付くことすらしてないと思うんですけど!!

 嫌だアアアアアアアアアアァ!!

 恐いよおおおおおおおおおぉ!!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る