デスク(物理)スペースと、デスクトップ(仮想)スペース


狙いすぎな語呂合わせで申し訳ないのだが、デスク(物理)のスペースと、PC画面上のデスクトップ(仮想)のスペースは『面積』という同じ制約を持っていると思う。


いやもちろん、デスクトップ(仮想)はデスクトップ(物理)のメタファーを成り立ちとしているのだから「なにをいまさら馬鹿っぽいことを?」と思われるかもしれないが、そして実際に馬鹿っぽい発想なのかもしれないが、画面のデスクトップ(仮想)は本当にデスク(物理)的な作業スペースなのか? ということを考えてみた。


自分でも少々記述がこんがらがってきた感があるが、ここでは仮に、デスクトップ(仮想)を『ファイル一覧やアプリケーションのウインドウを開いておける画面上のスペース』と考えさせて欲しい。


その発端は随分と昔の話になるが、タブレットデバイスの性能が上がり、そこそこPC代わりに使えるようになってきた、という話を聞いて、早速試してみた時だ。(初代からずっと歴代のiPadを所有しているが、ほぼ電子ブックリーダーとしてしか使っていなかった。あとは天気予報の表示である。)


ご存じの通り、iPadを動かしている「iOS」にはホーム画面はあってもデスクトップが無い。

そして、ホーム画面というのは基本的にアプリケーションのランチャーであり、自分のファイルを保管する場所でも一覧する場所でもない。


すべてのファイルはアプリケーションごとに紐付けられていて、ある程度のデータの受け渡しはできる物の、その世界は明確に分断されている。

これは、セキュリティ的な要求で致し方ない側面もあるのだが、私にとっては使いにくいこと甚だしかった。


なぜなら、一般的に多くの人が利用していると思われるOffice環境だけに限って考えても、「Wordの資料を参照しながらExcelで計算した結果をコピーしてPowerPointに貼り付けて資料をまとめる」くらいは標準的な使い方であって、アプリケーションを行き来するたびに『全画面が切り替わって』いたのではやっていられない。


いやもう、実際に試したが、やっていられなかった。


加えて言えば、そこにPDFビュアーとメモパッドとWebブラウザが立ち上がっていないはずは無い...絶対無理である。


デジタルな画面であれば、ウィンドウを切り替えたりすることで、仮想的にはいくらでも広くというか、多重化させて使えるように思えるのだが、これは実際には違う。


『同時に一覧できていない物は、思考の中にないもの』なのだ。


まあ、思考の中に存在しないとまでは言わない物の、目の前に見えている情報に比べると、後ろに隠れている情報は、扱う際に追加のワンステップが必要とされる。(もちろん、これは私の脳のキャッシュメモリ容量が非常に少ないという、残念な個人的事情の影響も大きい。)


複雑な事象を多面的に検討するために、自分のデスクではなく、あえて会議室に行って、テーブルいっぱいに資料を広げた経験は無いだろうか?


また、会議やブレインストーミングでホワイトボードが役に立つのは、「みんなで読める大きな字」を書けるから_だけ_では無くて、「沢山のことを書き出して一覧できるから」という意義も大きいだろう。


ともかく、効率的な思考を行うためには、沢山の資料を並べて『一覧できる』大きなデスクスペースが物理的に必要とされるように、仮想デスクトップも、できるだけ表示面積そのものが大きい方がいい。


そこに思考を中断させる『スイッチング操作』が介在してはならない。


だから私は、ディスプレイのサイズ、すなわち『一覧できる情報量』が、思考の深さに影響を与えるのだと確信している。


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< もちろん、タブレットでの作業が「イラストを描く」といったことであれば、使い勝手に関する話はまるで違ってくるだろう。>


< 今でも最新機種のiPadを愛用しているし、外付けキーボードなども持っているのだが、現在のところ私にとってiPadは単なるオンラインサービス&コンテンツのビュアー+αという程度である。>


< 個人的には、「VR環境」に最も期待していることの一つが、この『情報の一覧性』を飛躍的に高められるのでは無いか? という役目である。現状では解像度や長時間利用した場合の影響など、解決しなければいけない問題は山ほどあるが、そこはテクノロジーの進化に期待したい。>

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