情報の価値をどう計るか
『一塊りの情報』は複雑な状態や傾向の重ね合わせでなり立っているものであり、三次元空間に綺麗に配列して分類することができない。
それに、ある情報がどういう分野に所属している、あるいは影響を与える事柄なのかは、情報の観察者自身がその情報をどう利用したいかによって変化する。
例えば、屋根に貼られた瓦の配列に関する論説は工学であると同時に、別の人にとっては建築様式や街の景観に関わる美術的問題かも知れないし、これがもしも千年前に書かれた都市計画の論説だったら、実用的な技術資料であるよりも歴史的な文化資料だという意味の方が遙かに大きいだろう。この場合、内容はまったく変化していないのに、時間の経過と共に受け止められ方が変化しているわけだ。
そして、この瓦が太陽光発電パネルになったりすると、今度はエネルギーやIoTといったジャンルの話にも関わってくる。
要するに、情報の意味や価値の捉え方は『視点と状況』によってどうにでも変わるのであり、その位置づけを万人共通の尺度で固定することは不可能だ。
情報には高い価値があると認識されているにもかかわらず、情報の流通をシステム化するのが難しいのは、それが理由でもある。
受け手の状況によって評価する価値がまったく異なり、しかも時間の流れに伴って大きく変動する。
いったん受け渡しされた情報は(ここでは物理量では無く、情報量のビットとして)元に戻す、と言うことができない。すべての情報は返品不可である。
それはある種、時間の流れと同じように絶対的に不可逆だ。
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さて、情報の整理を三次元の配列に収められないのなら次元数を増やすしかないが、いかにデジタル化した情報だとしても四次元以上は人間の理解の手に余る。
そこで、古来から博物学の分類で利用されてきたラベル(分類)に加えて、タグ(目印)という概念が多用される。
『分類』などという整合不可能な概念で綺麗に収めようということは諦めて、その情報に見いだした属性を片っ端から目印として付与していくわけだ。
情報がデジタル化される以前は、情報の目録というかリストを別に記載して、それを隅から隅までチェックする必要があったが、情報をデジタル化した上でタグを検索できるようにしておけば、全ては一瞬で片が付く。
さらに一歩進んで、わざわざ情報へのタグ付けを行わずに、文章や画像などの解析技術を使ってどんな情報が含まれているかを自動的に抽出し、それをタグの代わりに利用してしまえば、人間がいちいち内容を咀嚼して利用率の高いタグがなにかを考えるという手間さえ省ける。
多くの人にとっては、自分には関係ない属性のメタ情報が山ほど付与されることになるかも知れないが、なにか情報を見つけ出したいときは、求める属性を持つ対象だけを検索してピックアップすれば良いのだから、無関係なものは見えてこない。実用上、特に面倒はないと言っていいだろう。
もちろん、この方式にも様々な欠点があるが、その最大のものは『タグ付けされてない情報は、どれだけ検索しても永遠に見つけ出すことができない』ということかもしれない。
まあ、『検索エンジン』という単語には色々と言いたいことがあるのだが、ここでは別のまとめ方をしておこう。
『いつから検索結果がニュートラルだと錯覚していた?』
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< 時間の流れが不可逆である、という点には異論を唱えたい方も多いかもしれないが、そこは実用的な範疇で考えて頂きたい。また、私は個人的には先日(2018.3.14)亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士の「時間順序保護仮説」に賛同している。>
< SF映画「コンタクト」に登場する異星人たちは、登場人物の弁によると情報をハンドリングするために『次元を効率的に扱う方法』に秀でているそうで、いつかその仕組みを知りたい。>
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