第15.5話 歓迎の続き


私の歓迎会を始めて、約1時間が経った。


光樹さ…光樹は、さっきから変な踊りをしていた焔さんと星太さんに絡まれている。



…てか、みんな未成年だと思うし、お酒飲んでるわけじゃないよね?



そう思うくらい、部屋は騒がしかった。


私の隣では、食事を終えたレミが丸くなって寝ている。


「ねぇねぇ、結希って高校1年生なんでしょ? 」


「へ? ふぉう(そう)ゴクッ…だけど…。」


食事をしていた私に、モカさんはそんなことを聞く。


「高校かーすげぇな結希は。俺は学校なんか、もう行きたくねぇなー。」


「俺もー。」


いつの間にか変な踊りを止めた2人が来て、そう言う。


「…高校、行ってないんですか? 」



……2人共、高校に通っていてもおかしくない年齢だと思う…けど…。



「ああ。」


「うん。」


当然 といった感じで2人はそう言う。


「というか、俺はまだ中学生だから、飛び級でもしない限り高校生になれないし。」



…ん?



「あ、あの…星太さん達って一体何歳…。」



……私より年上だと思うんだけど…。



「16だけど? 」


「俺は19。」


「ええっ!? 」




…焔さんはともかく、星太さんは高校生でもおかしくない年齢…なのに、中学生?


もしかして留年…。



私が驚きながら、そんなことを考えていると。


「そんなに驚くこと? 」



モカさんが私の反応に首をかしげる。


「そうだよ、俺達からしたら結希ちゃんが高校生ってことのほうが驚きだけどなー。」


「え? 」



……それは普通じゃ…。



「そうだぜ。俺らの中で高校生っつったら、光樹と雪奈くらいだしな。」


「そ、そうなんですか!? 」


「呼んだ? 」


「何よ? 」


私が驚いていると、光樹と雪奈さんが料理をのせた皿を持って現れる。


「俺らの中で高校生は光樹と雪奈しかいねぇって、話してたんだよ。」


「本当にそうなんですか…? 」


「結希、敬語敬語。そうだよ。高校1年生。」


光樹も至極当然というように、そう答える。


「あっ…、えっと、あれ? 光樹と雪奈さんって一体何歳…。」


「19さ━。」


「ずーるーいー! 何で光樹だけ呼び捨てなんだよー! 俺も星太でいいから! ね! 」


「俺も焔でいいぜ! 敬語も無しの方向でな! 」


光樹の言葉を遮って、2人は私に迫りながらそう言う。


「う、うん…。」


2人の気迫にやや気圧されながらも、私はそう言って頷く。



ぐいっ。



「2人共、結希がびっくりしてる。」


光樹はそう言いながら、後ろから2人の服の襟を掴み、後ろに下がらせる。


その表情は、心なしか不機嫌に見えた。



……言葉、遮られたもんね…。



「私も19よ。てか、私にも敬語なんて使わなくていいわ。」


そんなことを思っていると、雪奈さ…雪奈が騒いでいる3人を無視して、そう言う。



…あれ?


何かおかしい…19歳って高校生の歳じゃないし、星太さ…星太の16歳だって、高校1、2年くらいの歳じゃ…。



「結希は凄いじゃん、その歳で高校生なんだから♪」


「そうよ、もしかして結希もどっかの誰かさんみたいに飛び級したの? 」


「え…? 」


モカと雪奈の言葉に、私がますます混乱していると。


「何の話してるんだ? 」


そんなことを言いながら、旭さんが現れる。


「結希、自己紹介で高校1年生って言ってたじゃん? 」


「ああ、そういえばそうだね。」


「だから、結希も旭みたいに飛び級してるんじゃないかって言ってたの♪ 」


「へぇ。」


旭さんは聞いてきたくせに、さして興味無さそうに相づちをうつ。


「しかも結希ったら、私達の年齢とか聞いて凄く驚いたんだよ! 私達ってそんなに若く見えたのかな? 」


無邪気に きゃはっ なんて言いながら、モカさんはそう言うが。


「…その逆じゃない? 」


「殴られたいの? 」


食事をしながら話した旭さんに、モカさんは拳を見せながらそう言う。



ドカッ。



…というか殴った。


「…それで、結希も飛び級なの? 」


そんな2人を見てため息をつきながら、雪奈は私にそう聞く。


「え…私は普通に高校1年生…だけど…。」


「でも、15歳でしょ? 」


「う、うん…。」


「…多分だけど、結希の世界と俺達の世界じゃ、学校のしくみが違うんじゃないか? 」


私が混乱していると、旭さんがそんなことを言う。


殴られたせいで、右頬が腫れていた。


「しくみが違う? 」


「うん。だって、結希が高校生なのは、結希の世界では当たり前のことなんだろう? 」


「そうです。」


「でも、ここでは当たり前じゃないよ? 」


「うーん…。」


そう言って、旭さんは少し考える。


「取り合えず、学校と呼べるもので一番最初にあるのは小学校。これには6年間通うんだ。これは同じ? 」


「はい。」


「じゃあ、その次が中学校っていうのも? 」


「同じです。」


「どこも違わないじゃない。」


雪奈は呆れたように旭にそう言う。


「あっ! でも、星太が中学生って聞いたら凄く驚いてたよね? 何か違うの? 」



いや、だって…。



「星太って16歳でしょ? 」


「そうだよ! 」


私の問いに、さっきまで3人で騒いでいた星太が再び現れる。


「つーか、まだその話してたのかよ。」


「2人が途中で遮ったから長引いてるんじゃないか? 」


「う゛…。」


星太に遅れて、2人も再び現れる。


「俺達の中で中学校に通ってるのは、星太、ライ理那、モカで、高校は雪奈と光樹だ。」


「そうそう! 俺とライと理那は中学4年生! 」


…ん?



「そうね、後はみんな高校にいかないって決めた人達だものね。」


「1人例外もいるけどね♪」


「ちょ、ちょっと待って。」


私がそう言うと、みんなは私を見る。



……今、聞き間違いじゃなければ…。



「今、中学4年生…って言いました? 」


「言ったよ? 」


「言ったわね。」


「ちなみに私は中学5年生♪」


「中学校は6年間だよ。」



……違う…。



「…私の世界では、中学校は3年間です。」


「「ええっ!? 」」


「じゃ、じゃあ後の3年は!? 」


「もしかして、勉強しなくていいのか!? 」


今度はみんなが驚く番だった。


「いや…だから中学校を卒業したら高校があって、高校も3年間通うの。」


「へぇー。」


「高校の年数も違うのね。」


「そうだね、僕達の高校は4年間だから。」


「そ、そうなんだ…。」


「やっぱり、しくみが違うから話がすれ違ってたんだな。」


少しからかうように笑いながら、旭さんはそう言う。


「結希、この世界では、小学校で6年間学んで、その後に中学校で6年間学ぶんだ。

ここまでは必ず誰であれ、必ず学ばなきゃいけない。で、最後に高校で4年間学べるんだけど、これは自由。

専門の分野に詳しくなりたい奴や、何でもいいからもっと学びたい奴が行くことが多いかな。」


雪奈と光樹を見ながら、旭さんはそう言う。



…あれ?


高校が最後ってことは…。


「大学は無いんですか? 」


「ダイガク? 何それ? 」



…無いんだ。


旭さんに首をかしげられ、私はそう思う。


「私の世界では、高校の次に、大学に行く人もいるんです。…この世界の、高校みたいな所です。」



…てか、聞いてて思ったんだけど、この世界の中学校って私の世界でいう中学校と高校を一括にしただけのような気がする。


で、高校は多分、大学。



「ふーん。」


やっぱり旭さんは、さして興味無さそうにそう言う。


「なんだ、じゃあ結希は飛び級とかそういうわけじゃねぇのか。」


「うん。」


「ちょっとびっくりしちゃったぁ♪」


「この中に飛び級経験者が2人もいるなんて異常よ。」


雪奈は旭さんを見ながら、そう言う。


「そういえば、旭さんは飛び級してるんですよね? 」


「そうだけど? 」


それが何か? みたいな顔で聞き返してくる旭さん。


「旭は今年、高校を卒業したんだ。」


「ええっ!? 旭さんって何歳…。」


「17よ。」


少し苛立ち混じりに雪奈がそう答える。


「本当、ちょっと頭がいいからってな。」


「ちょっとじゃないけどね。」


「そうだ、お前なんかぎりぎりで卒業したんだから少しは見習え。」


ため息混じりにそう言いながら、雫が現れる。


「なっ…!? 」


「でもでも、頭は良いけど運動はイマイチだよね、旭♪」


「いや、そんなことはない。」


そう言うものの、目をそらしている旭さん。


「「へぇー、そうなんだ。」」


黒い笑みを浮かべながら、2人はそう言う。


「なら今度、みんなで運動会でもやろうよ! 」


「そうだな! ここで! 」


「それはそれで、楽しそうだな。」


「こ、ここで!? 」



……それはちょっと無理じゃ…。



「ここはちょっと厳しいんじゃ? 」


私が思ってたことを、光樹が聞く。


「でも、旭は外に出ないわよ。」


「大丈夫♪運動会の為なら、旭はなんとかしてくれるよ♪ね、旭? 」


そう言って、モカさんは旭さんを見る。


「え…。」


「ね? スポーツ万能な旭が運動会に手を抜く訳がないもんね♪」


「う、うん…。」


そう言いつつも、旭さんは微妙な顔を隠せない。




そんな話をしている内に、歓迎会の夜はふけていくのだった。



【つづく】

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