第25話 襲撃



ドーン!




見張りをしていた俺達を呼びに来たレミと一緒に階段を降りていた時、ずっと静かだった教会の外で大きな衝撃音がした。


《ワ、ワン!? 》



前を歩いていたレミが、音に驚いて立ち止まり吠える。


『ヴォルスだ! きっと、雪奈の結界が壊れたんだ! 』


『お、落ち着けレミ! 大丈夫だ。待て焔、1人で行くな! 』



そう言いながら光樹は、俺の前に立つ。



『光樹、まずお前が落ち着け。』


『あ、ああ。とりあえず、外に行ってみよう。』



光樹がそう言うと同時に、俺達は階段をかけ降りる。


降りた先の広間では、動揺している村人達を雫達が落ち着かせていた。


『光樹! 』



雪奈がそう言いながら、俺達の所へ来る。


『多分、結界が壊れたわ。』



村人達に聞こえないように注意しながら、雪奈は俺達にそう言う。


『雪奈、結希がいない! 』



そう言いながら、少し焦った様子の雫が雪奈に駆け寄ってきた。


『結希が? 』


《ワン、ワンッ! 》



疑問に思う雪奈とは対照的に、何かを伝えるかのように激しく吠えるレミ。


『レミ、分かったから落ち着けって。』



…何か、嫌な感じだ。



『…とりあえず、外の様子を見てくるよ。』


『俺、先行ってるぜ! 』



そう言って、俺は走り出す。


『待て、焔! 雫と雪奈は中にいて! ライ、レミ、行こう! 』



俺の後に続きながら、光樹がそう言う。


ライとレミもその後に続いた。






─そして。


俺達の目の前で、結希とリクは連れ去られた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー――――――――――――






「離してくれ! 」



あの後、俺達は広間に戻っていた。


ライは雫に手当てをうけている。


光樹も手当てをうけなきゃいけないんだが……。


「お願いだ、離してくれ! 」



雪奈の命令で自分を押さえている数人の村人達に、光樹はそう訴える。


「駄目だ! 離したらあんた、ここを出ていくだろ! 」


「雪奈さんが戻ってくるまで少し待て! 」


「そうだ! それに君、怪我をしているじゃないか! その手当てもしないと……。」


「こんなの大したことない! そんなことより─。」


「終わったわ。ありがとう。」



光樹の言葉を遮って、結界の修復を終えた雪奈がそう言う。


雪奈の言葉を聞いた村人達は、光樹を押さえつけるのを止めた。


光樹はすぐに、外へ出ようと扉の方へ走り出そうとする。



……が。




ガッ……ドシャッ。



雪奈が出した足に引っ掛かり、光樹は顔面から転んだ。



…今の、ぜってーわざとだな。



「な、何するんだ…雪奈…。」




ガシッ。




「行かせるわけないでしょ。」



起き上がる光樹を掴みながら、雪奈はそう言う。


「でも早く行かないと、結希が! 」


「怪我の手当てが先。そんな体で行ったって、またやられるだけよ。」



そう言われ、少しおとなしくなった光樹を雪奈はずるずると引きずる。


そんな2人を見ていたその時。



「そうだ、お前達はおとなしくここにいろ。」



聞き覚えのある声が、広間に響く。


俺達と少し違ったデザインの軍服。


王国軍の証であるバッチをつけたそいつはそう言いながら現れた。


後ろに2人の部下もいる。


部下を引き連れている方はよく知っている。


部下は何回か会った気がするが名前は思い出せない。


ただ、気にくわない奴らだったことだけは確かだ。



「な、何であいつらがここに……。」


「女王様の命令らしい。」



驚いている俺の隣に、不機嫌そうな雫がやってくる。


「はぁ!? …つか、どうやってここに入ったんだよ、あいつら。」


「さっき旭から連絡があって、私がゲートを開けた。」


「ああ。つか、ぜってー女王の命令とか嘘だろ。」


「おい焔。」


「…嘘ではないと思う。」



そう言いながら、ライもやってくる。


「そうだ─。」


「というか、命令させたってだけだと思う。」



そして、同意しようとした雫の言葉を遮って、ライはそう続けた。


「ああなるほど、女王をうまく言いくるめたのか。」


「…女王様が言いくるめられた訳じゃなくて、あいつらがごり押ししたんじゃないか? 」


「2人とも、いい加減にしろ。」



雫がため息をつきながらそう言ったのを機に、光樹達の方へ視線を戻すと。


「…嫌です。」



あの軍人を睨み付けながらそう言う光樹の姿があった。



[つづく]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る