第24話 抵抗
「あーあー。ひまだなー。」
両腕を上に伸ばしてそう言う焔。
俺達は、教会の一番高い所で見張りをしている。
教会によく見る、鐘の部分だ。
ただ、3人でいるには少し狭い。
「やっぱ、外に行ってヴォルス倒そうぜ。」
「……駄目だ。」
「だってー。」
「そんなことしたら、また雫に蹴られるって。」
「う……。」
雪奈の結界があるから、本当は見張りなんていらない。
だけど教会に来たとき、俺達は 基本やることが無くて、ただただ話してばかりいたら雪奈に うるさいから見張りでもしてろ と追い出された。
『ワン。』
もう何度目になるか分からない焔の説得が終わった頃、背後にある階段から鳴き声が聞こえた。
「レミ? どうした? 」
『ワンワン! 』
聞いてはみたものの、やっぱり結希みたいに言葉を理解することは出来ない。
「……何て? 」
「いや、分からない。」
『ワン゛ー。』
するとレミは、焔のズボンの裾をくわえて引っ張る。
「わっ! 何すんだよ、レミ! 」
「……下に来いってことか? 」
「多分、そうだね。」
そう言いながら、俺達は階段を降りていくのだった。
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「姫様も無事見つかったことですし、騒ぎにならないうちに行きますか。」
姉ちゃんを両腕で抱えながら、執事服を着たおじさんはそう言う。
「こいつはどうします? 」
いつの間にか俺の左腕を掴んでいたヴォルスがそんなことを言う。
「は、離せ! 」
そう言って俺はヴォルスから逃れようと暴れてみるものの、全く効果はない。
「……そうですね………一応、連れていきましょうか。」
「かしこまりました。」
そう言ってヴォルスは俺を片腕で抱え、2人で歩き出す。
「離せ! ぐ……この……はなー。」
バン!
すると、その時俺の言葉を遮って勢いよく教会の扉が開いた。
その音に2人は歩みを止め、扉の方を振り返る。
「また一足遅かったですね、光樹さん。」
そこにいたのは、教会のてっぺんで見張りをしているはずの3人の兄ちゃん達とあの子犬。
みんな怖い顔をしていて、子犬は毛が逆立っている。
「タツキさん……。」
『ヴヴー。』
「2人を返せ! 」
ザッ、ボォォォ!
そう言って、黒髪の兄ちゃんが持っていた大きな剣を地面に刺すと、炎が3、4本地面を這って俺達の方にくる。
だけど、ヴォルスとおじさんはその攻撃を軽く飛んでかわしてしまう。
バチバチ……。
「……返してもらう。」
そんなことは予想していたのか、今度は金髪の兄ちゃんがヴォルスのすぐ横に現れ、殴ろうとする。
同時に、緑の髪の兄ちゃんもおじさんを剣で斬ろうとする。
……だけど。
「……やれやれ。」
トンッ。
そう言いながら、おじさんが片足で軽く地面を踏んだ瞬間。
ドカッ。
地面から突然現れた土製のでかい拳が、兄ちゃん達を殴り飛ばした。
「……っ! 」
「ぐはっ……。」
『ワンワン! 』
飛ばされた兄ちゃん達に、子犬が駆け寄る。
「ライ! 光樹! このー。」
パチン。
黒髪の兄ちゃんの言葉の途中で、おじさんは指を鳴らした。
ビュォォォオオ……。
すると、俺達の周りを風が渦巻き、だんだん兄ちゃん達が見えなくなる。
「……ではまた。」
おじさんがそう言うと同時に風はさらに強くなり、兄ちゃん達は完全に見えなくなった。
[つづく]
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