第22話 動く藁
…何だこいつら。
藁に座る俺の目の前にいるのは、戸惑った様子の人が良さそうな顔をした男と女。
その後ろに、性格のきつそうな女と機嫌がいいのか尻尾をぶんぶん振っている仔犬がいる。
「え、えっと…君はなんて名前…なのかな? 」
手前に立っている女が俺にそう聞く。
「……。」
「あっ! 私達は敵じゃないから!てか、こっちから名乗るべきだよね! 」
黙ったままの俺を見て、手前に立っている女はそう言う。
…敵じゃないなら、本当に何なんだこいつら。
「私の名前はね━。」
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ザザザッ。
細い路地を走った先にあったのは、動く藁。
…………………いや、おかしいでしょ。
「結希! 」
そう、背後から光樹が叫びながら私の方へ走ってきた。
「やっと追いついた…。1人は危ないから、あんまり離れないで。」
「あ…ごめん。」
…そうだった。
追いついた光樹に軽く注意された私は、少し反省する。
「それで、人はいた? 」
ザザッ。
「ううん。ねぇ、光樹。」
ザザッ。
「何? 」
「こっちの世界では、藁は自分で動くの? 」
「え? 藁? 」
「うん。ほら。」
私がそう言って藁の方を指すと。
ザザザッ。
光樹と私が見ている前で、藁は動いた。
「え…。」
「…ね? 」
「中に何かいるんじゃないの? 」
固まってる私と光樹に、追いついた雪奈がそう言う。
振り返ると、隣にはレミもいた。
「何かって何? 」
「そんなの、わかんないわよ。」
『というか、さっきからその藁動いてないよ。(ワン。)』
レミにそう言われ、もう一度藁を見てみると確かに動いていない。
…もしかして、藁の中にいる何かが力尽きてしまったのか。
ザッ。
すると、藁は再び少しだけ動いた。
「と、取り合えず…藁をよせてみる? 」
「そうね。」
ザッザッザッ。
そうして、恐る恐る藁をよせていくと。
━ザッ。
藁の中から、12歳くらいの男の子が現れた。
「……。」
男の子は、眩しそうに目を細めた後、私達を警戒心むき出しな目で見つめる。
「え、えっと…君の名前はなんていうのかな…? 」
藁の上に座って黙ったままの男の子に、私は取り合えずそう話しかけてみる。
「あ! 私達は敵じゃないから! てか、こっちから名乗るべきだよね! 」
私がそう言うと、男の子はさらに警戒した顔をする。
…え、どうして。
「私の名前はね、姫川結希っていうの! 君の名前も教えて欲しいなー。」
?)「……そっちは。」
そう言って、始めて口を開いた男の子は私の後ろにいる光樹達を指す。
「え? 」
「…そっちの名前。」
会話をしてくれるようになったものの、その口調はだいぶとげとげしい。
「僕? 僕は光樹。よろしく。」
「私は雪奈よ。」
『レミ! (ワン! )』
「あの仔犬はレミっていうの。」
男の子に聞かれ、みんながそれぞれに自己紹介をする。
レミの自己紹介は多分通じていないので、通訳した。
「……俺は…リク。」
少しだけ警戒をやわらげ、男の子…リクはそう言った。
[つづく]
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