第21話 藁と物音



…苦しい。


兄ちゃんに言われてずっとここ(藁の中)にいるけど、なんだか苦しくなってきた。


でも、兄ちゃんは出るなって言ったし、喋るなっても言っていったから、どうにもできない。





………。





外に何かいる感じはない。


…ちょっと動いて、空気を吸うくらい大丈夫だろ。



そう思った俺は、藁から顔を出そうと、必死に藁をかき分ける。



…だけど、いくらかき分けても藁が途切れることはない。





…兄ちゃん、藁かけすぎだろ!



そう、ちょっと兄ちゃんにイラつきながら藁をかき分けていると。



…ザッ。



突然、目の前の藁が誰かによってかき分けられ、外の光が差し込んだ。



ーーーーーーーーーーーー






ドーン!



雫さん達とは反対方向から村をまわっていた私達だけど、ヴォルスどころか村人1人見当たらなかった。


代わりに見えるのは、ヴォルスに破壊されたのだろうか…ボロボロに壊れた家と、そこら中に残る血痕だった。


「うっ…。」



…ううん、それともう1つ。


所々に人の一部のような物が転がっている。



『大丈夫? 結希? (クゥーン? )』


「だ、大丈夫…。」



…吐くなんて失礼だと思いながら、私は胸にわき上がってくる吐き気を押さえる。


「全然いないね、人。」


「そうね。この様子だと、ヴォルスに殺られたようね。」


私とレミの前を歩いている2人は、そんな会話をしている。



……2人共、よく平気だなあ…。


私は目に見えるものもそうだけど、何より臭いがキツくて…。


血っていうか、なんていうか━。



そんなことを考えながら、レミの隣を歩いていると。



━サッ。



「ん? 」


何か物音がした気がして、私は立ち止まって後ろを振り返る。


…だけど、後ろに物音立てるような物は何もない。


『どうしたの? (クゥン? )』


少し先に進んだレミは私の方を振り返り、そう言う。



…空耳かな?



「ううん、なんでも━。」



ガサッ。



すると今度は私の言葉を遮って、また物音がする。



ガサッ。



「うっ…。」


物音がする方を辿っていってみると、まだ乾ききっていない血溜まりが広がっていた。


その血の主が着ていたと思われる服も落ちていた。


その奥には、細い路地がある。



『大丈夫、結希!? (ワン!? )』


レミはそう言いながら、私の方へ駆けてくる。


レミの鳴き声に気づいた雪奈と光樹も、私の方へ戻ってきた。


「だ、大丈夫だから…。」



…それよりも。





ザザッ。





…物音は、この細い路地の方から聞こえる。


もしかして、まだ生きている人が?



「…こっちから、なんか聞こえる。」


「えっ? 」


私がそう言いながら細い路地を指すと、雪奈は警戒した表情で路地を見る。


「まだ人がいるのかも。私、行って見る。」


そう言いながら、私は走り出した。



「あっ、待って!結希! 」


『結希! (ワン! )』


「ちょっと! 」



[つづく]

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