第18話 おかしな夢



ビュオォォォ…。



もの凄く強い風の音が聞こえる。


私は、周りで何が起こっているのかを確かめるため、目をあけた。


「女王様!どういうことですか!?」


風は、私から10mほど先にいる女の人と男の人を中心に起こっていた。


男の人が、強風の中で必死に女の人に向かって叫んでいる。



……何これ…。


確か私、さっきまで城にいたよね?


女王様達に会って、騒ぎが起きて…。


………………あ。


そうか。


これは夢だ。


私、あの倒れた人を看てたら寝ちゃったんだ。



「あなたに、国が―再び――です。―やってくるであろう、―――に。」


「それは―ません!でも、――――!それに、――たら、誰が――ですか!」


2人の会話は、強風のせいなのかよく聞こえない。


女の人は、なんだか少しレイ様に似ている気がした。


男の人の方は、全く見たことがない顔で少しくせ毛の感じがする腰の上辺りまである銀髪が綺麗だと思った。


「――します。――きっと、―――――必要になるでしょう。そして、―――時、――――ます。その方――、国にとっても、―――――。」


そう言う女の人の言葉を聞いている男の人は、哀しみと戸惑いが混ざったような表情をしている。



「救世主となるでしょう。」


そう、最後の言葉だけがやけに鮮明に聞こえた次の瞬間、私の視界は真っ暗になった。


ーーーーーーーーーーーー




「―ません。」


夢から現実に意識が戻ってきた私は、誰かに体を揺さぶられる感覚と、それと共に聞こえる声に起こされる。


「すみません。」


よりはっきりと、誰かの声が聞こえる。


私はゆっくり目を開けた。




「ん…。」


「こんな所で寝ていると、風邪をひきますよ。」



…なんだか聞き覚えのある言葉だ。


喋っているのは―。



ーーーーーーーーーーーー


『行きましょう、姫様。』



ーーーーーーーーーーーー




ガタッ!ドンッ!



目の前にいたのは、噴水の広場で会ったタツキという男の人。


私は、ぼんやりしていた意識が一気に冴え、椅子から立ち上がり相手を突き飛ばした。



…あの時、光樹は躊躇なく攻撃した。


きっとこの人は危険な人だ。



そう思いながら、突き飛ばした相手を見ると。


「いたたた…。」


そう言いながら、私の前でしりもちをついているのはタツキという男の人ではなかった。


「すみません、驚かしてしま…わっ!」



ドン!



男の人は、そう言って立ち上がろうとして転ぶ。


「だ、大丈夫ですか!?」


「す、すみません、大丈夫です。ちょっとふらついただけなので…。」


そう言う男の人をよくみると、ベットに寝ているはずのあの、城に倒れ込んできた人だった。


名前は確か…。


「…ナツキさん、でしたっけ?」


「はい?」


私は椅子に座りながら、ナツキさんはベットに戻りながらそう言う。


「あの…失礼ですが、あなたは…?」


「あっ、私は姫川結希といいます。光樹達の…仲間です。」


「そうだったんですか。ナツキです、城で執事…のようなことをしています。よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。あの…すみませんでした。いきなり突き飛ばしてしまって…。」


「気にしないでください、驚かせた俺も悪かったんです。」



…何でこの人を突き飛ばしてしまったんだろう。


目が覚めた時、なんだかこの人とタツキという男の人が重なって見えた。


でも、私の前にいるナツキさんは、確かにタツキという男の人と同じ暗めの茶髪だけど、オールバックじゃなくて肩より少し短いくらいの短髪だし、タツキという男の人より若い気がする。


前髪の左側が長く、それで左目が隠れていた。



私がそんなことを考えていると。




「どうかしました?」


黙りこんだ私を心配そうに見ながら、ナツキさんはそう言う。


「い、いえ、何でもないです。」



…あとで誰かに聞いてみよう。


タツキという男の人のことも聞けてないし。



「そういえば光樹は―。」



ガチャ。



ナツキさんの言葉を遮って部屋に入ってきたのは、毛布を持った光樹。


「ナツキさん!起きたんだね!…あれ?結希も起きちゃったのか。」


光樹は嬉しそうに微笑みながらそう言う。


「うん。」


「ごめん光樹、俺が起こした。」


「いいですって、僕、みんなを呼んできます。」


そう言って、光樹は毛布を持ったまま部屋を出ていこうとする。



…もしかして、私の為にわざわざ毛布を持ってきてくれたのかな。



「…ごめんなさい。」


私が光樹に向かってそう言うと、光樹は立ち止まって振り返る。


「何で謝るの。結希、何も悪いことしてないだろ?ナツキさんのこと、頼んだよ。」


微笑みながらそう言って、部屋を出ていった。



[つづく]

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