第13話 不思議な街2


「なんだここ…。」


町らしき所に来た私は、混乱していた。


…なんというか、手前の町の雰囲気は明らかに江戸時代らへんなのに、数メートル先に行くと、イギリスのロンドンとか、そんな感じの国を思わせる町並みが広がっていた。


「どこなの…? ここ…。」


ついさっきまで、雫さん達の家にいたはずだ。


外であることは確かだけど、一体どこなのだろう。


もしかして、また変な所にきたんじゃ…。


そんなことを考えながら歩いていると。


「ん!? 」


私の目にとまったのは、江戸風の町とロンドン風の町の境目くらいにある、ケータイショップ。


ケータイショップがあることにも驚いたけど、それよりも特に私の目をひいたのは。


「あれって…、スマホ? 」


そう、それは紛れもなく、◯コモとか◯フトバンクなどで販売している、スマートフォンだった。


…もしかして、私の世界に戻ってきた?


なんかちょっと違うけど、◯画村とか、そんな感じの所に飛ばされたのかな?


それなら。と、私はケータイを開く。


もちろん、私はガラケーだ。


「……何で…。」


画面には、【圏外】の文字。


「…電波、悪いのかな。」


私は取り合えず、ケータイを閉じてケータイショップへ近付いてみる。


「やっぱりスマホだ。いいなー。」


そんなことを言いながら見本の中の1つを手にとって操作してみると。



ヴン…。



電源ボタンを押した瞬間、画面からコマンドのようなものが飛び出る。


「えっ!? すごっ! 」


ついにここまで進化したのかと、私が驚きながらスマホをいじっていると。


「お客様、シープは初めてですか? 」


「え? 」


声をかけられ私が横を向くと、優しそうな女の店員さんが微笑んでいた。


「シープ? 」


「はい。お客様が今、手にしているそちらです。」


「スマホじゃなくて? 」


「スマホ? いえ、そちらは我がアスナコンポレーションが開発した、携帯端末、シープです。」


「ふーん…。じゃあ、スマホはもう売らないの? 」


◯コモとか◯フトバンクが開発したんじゃないのか、とか思いながら、私はそう聞く。


「スマホ? 申し訳ありませんお客様、スマホとは何でしょうか? 」


「え…何でしょうかって…スマートフォンっていうケータイだけど…。」


「申し訳ありません…存じあげないです…。」


「えっ!? う―。」


うそでしょ!? と、言いそうになるのを止めたのは、シープの飛び出ている画面の中にあった、電波状況を示すアンテナ。


ちゃんと3本立っている。


「…すみませんでした! 」


そう言って、私は急いでケータイショップを離れる。


「はぁ…はぁ…。…どういうこと? 」


そう言いながら、私は恐る恐る自分のケータイを開く。


…やっぱり、圏外だ。


「……もしかして…。」


私の中に1つ、良くない考えが浮かんだ。


「戻って…ない? 」


そう、ここはまだ、旭さんが説明してくれた第1世界とかいう所なのではないのかということだ。

まあ、それなら仕方ない。


…戻れなかったのは残念だけど。


ただ、旭さん達の家にどう戻ったらいいのか分からない。


「どうしよう…。……あ。」


そういえば、雫さんは見廻りをするとか言っていた。


もし、それが町の見廻りなら、町を歩いていれば雫さんに会えるかもしれない。


「…よし。」


そうして私は、行くあてもなく、町の中を歩き出した。


------------------------


「ここら辺にいるはず…なのに…。」


そう言いながら、僕は商店街を歩く。


「光樹じゃないか。何やってるんだ、こんな所で。結希はどうした。」


そう、背後から声をかけてきたのは見廻りへ行った雫。


焔とレミは別行動をとってるみたいだ。


「雫! それが、結希さん、1人で外に出たらしいんだ…。」


「なんだって!? 1人で!? 」


「うん…それで、さっきから探しているんだけど、見つからないんだ…。地図によると、ここら辺にいるはずなのに…。」


「まったく、何やってるんだ。本当にここら辺なのか? 」


「そのはずなんだけど…。」


そう言いながら、僕はシープを取りだし、地図を見る。


「あれ? 」


「なんだ、どうした。」


そう言って、雫は僕のシープを覗きこむ。


「結希、西の噴水広場の方にいるじゃないか。」


「うん。でも、何でそっちに? 」


「迷っているんだろう。早く迎えに行ってやれ。」


「分かった。」


「見つけたら、連絡しろよ。」


「了解。」


そう言って、雫は見廻りに戻り、僕は西の噴水広場へと向かった。


------------------------


ジャー。


歩いて歩いて歩いて。


私がたどり着いたのは、中央に噴水がある広場。


噴水の周りには、噴水を背にする形でベンチが並んでいた。


その中の1つに、私は座る。


「疲れた…。」


周りには、約2組のカップルと、数人の人。


だんだん日も暮れてきた。


「雫さん、どこにいるのかな…。」


ここまでずっと歩いてきたけど、旭さん達の家らしき建物は見つからないし、雫さんもいない。




「…絵美、どうしてるかな。」


…あっちの世界はどうなってるんだろう。


突然私が消えて、パニックになってないかな。


頼むから、帰った時には夏休み最終日なんてことはやめてほしい。


「ふわあぁぁ…。」


…なんか、色々考えてたら眠くなってきた。


あ、ヤバい。


まぶたが…。


…ちょっとだけ…ちょっと目を閉じるだけ…。


そんなことを思いながら、私はゆっくりと目を閉じたのだった。



[つづく]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る