第9話 異次元

「取り合えず、今、結希がいる世界と前に結希がいた世界は違う。ここまでいい? 」


私は頷く。


「世界は3つに分かれていて、これが今の世界、第1世界。んで、その左隣が第2世界。そして、結希がいたのはここ、第3世界。」


旭さんは私に丸の中に1、その左隣にある三角の中に2、右隣にある六角形の中に3と書かれた図を見せながらそう言う。


「第1…第3…? 」


第1とか第2とかよく分からない。


というか、世界が3つなんて少なくないか?


早くも説明2つ目で、私は混乱する。


「あ、えーっと…君の世界の視点で言うと、第1世界は…存在すら認識されてないか。第2世界は、確か、アニメ・漫画の世界って認識されている所だ。

第3世界は結希が住んでいた世界。

ここで言っている世界っていうのは、世界地図の世界じゃなくて、次元のほう。つまり、君は異次元に来たってこと。」


「異次元? 」


「結希、君、アニメや漫画の世界に行ったことある? 」


「あるわけないですよ。大体、行きたくても存在しませんから。」


「さっき言った、第2世界がそうだって言っただろ。存在はするんだ。

そして、この第1世界が結希の全く知らない世界ってこと。」


「うーん…。」


「第2世界は第1世界と近いし、任務で行くこともあったから、知ってる人も多いけど、第3世界は資料しかなくて、それこそ、存在してるのか疑問に思うくらいだったんだ。

だから、この図でも、第3世界だけ離れているだろ? 」


確かに、よく見ると図の第1世界と第2世界は枠で囲まれていて、第3世界はその外にある。


「はぁ…つまり、アニメや漫画の世界は存在していて、(←面倒くさいのでもうそう考える。)

ここは、それと近い異次元で、私の世界はまた別にあるってことですか? 」


「うん。」


まだ完全に理解したわけじゃないけど、取り合えず、今いる場所は異次元らしい。


「ん? そういえば、なんで私が第3世界から来たって分かるんですか? 」


ここにいる人達の見た目と私の見た目に大した差はない。


なのに何故。


「ああ、それは、結希を調べた時、第2世界の人とも第1世界の人ともデータが一致しなかったから、消去法で、データの無い第3世界の人間だと思ったんだ。」


「そうなんですか。」


「状況を理解してもらった所で、次に進むよ。

その宝玉についてだけど、結希、少し力を入れてみて。」


旭さんは私を見ながらそう言う。


私は両手を握り、少し力んでみる。


「くっ…。」


「その宝玉に力を込めてると思って。」

旭さんが訳の分からないことを言う。


首にかかってる宝玉にどうやって、力を込めるのだ。

取り合えず、そんな感じのイメージはしてみる。



ポゥ…。



すると、宝玉が静かに金色に光りはじめた。


「ん!? 」


「あ、あれ!? 」


「……。」


「これは一体…。」

「驚いたな。」


私の周りにいるみんなの胸元でも、それぞれの宝玉が光っていた。


理那さん、星太さん、ソフィアさんを除いて。


「あ! もういいよ、力を抜いて! 」


思い出したように旭さんは言う。


「…はぁっ、はぁっ。」


力を抜くのと同時に、物凄い疲労感が私を襲う。


「だ、大丈夫!? 」

光樹さんが駆け寄ってきて、心配そうに聞く。


「だ…、大丈夫…です…。」


なんとか私は答える。


「どういうことだ。旭。」


少し驚いた顔をしながら、雫さんは聞く。


「結希はパートナーなんだよ。しかも、前の女王様に匹敵するくらいの力をもっている。だから、俺らの宝玉も光っただろ。」


「つまり、女王と同じように、私達全員のパートナーになれるってことか。だが、適合者はどうした。」


旭)「そこなんだよね。普通なら、適合者が先に現れるはずなのに…。属性は光、か…。」


パートナーとか適合者とかよく分からない話が2人の間で進んでしまっている。


「あの…。」


「ん? ああ、そうか、結希には説明しないとね。」


そう言って旭さんは喋りだす。




「この宝玉を使える人は限られていて、

宝玉に適合した人を適合者と言い、

宝玉と適合者の力をさらに引き出せる存在をパートナーと言うんだ。

ここにいるみんな、自分が持っている宝玉の適合者だ。

理那と星太とソフィアさんは訳あって宝玉が無いけど。

確か、光樹が君の前で力を使ったはずだよ。」


「うん。少しだけど。」


2人にそう言われて、私は髪がエメラルド色に光る光樹さんを思い出す。


ここにいるみんな、あんな力を使えるのか。


「そして、結希、君はパートナーなんだ。

しかも、俺達全員の力を引き出すことができる、珍しいパートナー。」


「てことは、部隊のリーダーになるの? この子。」


「そうだね。

光属性の力は女王と部隊の象徴でもあるから、そうなるけど、

結希はこの世界に来て間もないから、しばらくは光樹と一緒にリーダーをやってもらうことになるだろうね。」


「ちょ、ちょっと待ってください! 」


なんだかさっきから、話がよく分からない方向へ進んでいるが、私の目的はただ1つなのだ。


「どうしたの? 」


「私、自分の世界に帰りたいんですけど…。」

[つづく]

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