第13話



犯人逮捕は失敗。


私達を人質に、バスは走り続けていた。


だけど、バスはある所で停まり、そこで思いもがけない人物が乗ってきた。


ピエロの仮面をつけた…男。


何でここに…。


一瞬、昔の記憶がフラッシュバックする。


犯人の1人がさっき電話をしていたので、仲間なのかと思っていたが、ピエロの仮面の男は乗ってくるなり運転している男を撃った。


「なっ…! お前は…。」



私の後ろの席では杉沢さんが立ち上がり、驚いている。


「わ、悪かったよ、次はうまくやるからよ。」



私に銃を向けていた男は焦った様子でそう言う。


「…いいんだ。君には期待していなかったからね。」



そう言いながら、ピエロの男は犯人を通り過ぎ、杉沢さんの方へと向かう。


その様子を見て、犯人は安堵の表情を浮かべる。


「テメェ…。」



杉沢さんは今にも飛びかかりそうだ。


そんな杉沢さんに、ピエロの男は銃を向ける。


「杉さ…! 」



撃たれる、そう思って私が名前を呼んだ瞬間。



バチバチバチ!



「ゔあああ!」


スタンガンで杉沢さんを気絶させた。


「杉沢さん! 」


「君もちょっと眠っててね。」



ドッ!



仮面の男はそう言うと、今度は私を拳銃で殴る。


「うっ! 」



一気に体から力が抜け、意識が遠のいていく。


「さて、君の番だ。」



遠のく意識の中で、仮面の男が犯人に向き合っているのが見える。


「えっ? 」


「…覚えているかい? 」



そう言って、仮面の男が仮面を外して見せようとする。



…駄目、まだ眠っちゃ…。



そんな思いとは反対に私の瞼は下がってくる。


「なっ! お、お前は! 」



バァン!



「…覚えてたんだね。どの道君の未来は変わらないけどね。」



意識を手放す瞬間に聞こえたのは、2人の声と銃声だった。
















「この奥っぽいですね。」



咲ちゃんたちの乗ったバスを探して数分。


バスが森の奥に入ったらしい跡を見つけた。


「気づかれても面倒だし、こっからは歩いていくか。」


「ですね。」



そう言いながら僕たちは車を降りる。


「俺は連絡してから行くから、お前はバス見つけても待機な。お前入り口側、俺は後ろな。」


「分かりました。」












ウーウー。



サイレンの音が聞こえる。


ー咲ちゃん。


誰。


私の名前を呼ぶのは。


ー咲。


…お父さん、お母さん。


ーどの道、君の未来は変わらないけどね。


ピエロの男…!



「う…。」


「咲ちゃん! 」



目がさめると、京極さんが私の名前を呼んでいた。


「京極…さん…。」


「よかった…。」


「仮面の男は! 」



だんだん意識を取り戻した私は、勢いよく起き上がってそう言う。


「仮面の男…? 」


「っ! 」


「咲ちゃん!? 」



私は急いでバスを降りたが、そこには警察しかいなかった。


「おっ、柊! 無事だったか。よかった。お前に何かあったらー。」


「藤井さん。仮面の男がいました。」



私は、藤井さんの言葉を遮ってそう言う。


藤井さんはその言葉を聞いて、表情をこわばらせる。


「1人で歩けるっつーの! 」


「またまた竜ちゃん、やせ我慢しちゃってー。」


「うるせぇ! つうか竜ちゃんやめろって言ってんだろ! 」


「いつもより数倍イライラしてるけど何かあったの。」


「…うるせぇよ。」



私と藤井さんが話す後ろで京極さんと杉沢さんがバスから降りてくる。


「仮面って…。」


「両親を殺した現場にいた、ピエロの仮面の男です。」




[つづく]

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Clown dom @hah

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