第12話


『咲ちゃん! 』



あともう少し。


もう少しで手が届いたのに。


『離してください! 咲ちゃんが! 」


『駄目だ、 危ねぇって! 』



僕は、絶好の機会を逃してしまった。















「落ち着いたか? 」



助手席に座る僕に、コーヒーを差し出してそう言う藤井さん。


「すみません、僕…。」


「こっちのことはいいから休んでろ。怪我してんだから。」



そう言って、藤井さんはまた仕事へと戻っていった。


藤井さんが戻った先では、解放された乗客が手当を受けている。



僕達は咲ちゃんが2回目に送ってきたメールに書かれていた場所にきた。


そこで犯人が人質を解放するといったらしいからだ。


指定してきたのはコンテナが沢山並んでいる港。


人質となっていた乗客は約束どおり、運転手を含め全員解放された。


だけど、その後に降り注いだ銃弾により死亡者や負傷者が出た。


僕も腕を負傷した。





そんなことを考えていると、藤井さんが慌てた様子で車に戻ってくる。


「変なバスが森に入っていくのが目撃されたらしい。」



車に乗りこみながらそう言う藤井さん。


「それって…! 」


「ああ、恐らくな。」



そう言いながら、藤井さんは車を発進させるのだった。














犯人逮捕は失敗、逆に俺たちが人質として捕まっているという状況でバスは走り続けていた。


「やっぱりお前もサツか。」



俺の警察手帳を奪ったチャラついた犯人がそう言う。


「さてさて、俺たちをまんまと騙して計画を台無しにしてくれた訳だが…。」



男は俺の前に座るあいつに銃を向ける。


「まずお前から死ぬか? 」


「…乗客を撃ったのはあなた達の仲間ですか。」



銃口を向けられているのに、動じることなく話すあいつ。


「はぁ? 何言ってんだお前。ありゃお前達の仲間が待ち伏せして撃ったんだろうが。」


「違います。」


「しらばっくれてんじゃねぇよ! 」



あいつの言葉に、運転している男も反論する。



「ちっ…なんなんだよ…おい、そろそろ停めろ。」



銃を向けている男は窓の外を見て何かに気づき、バスを停めさせる。


運転している男も扉を開け、誰かを乗せようとする。



…そういえばここに来る途中、電話で誰かと話してたな…。



「…やぁ。残念だったね。」



そんなことを言いながら乗ってきたのは。


「本当、運が悪かったぜ! サツが乗ってるなんてよ! 」



バァン!



「そうだね。運が悪かったね。」



文句を言う、運転する男を躊躇なく撃ったそいつはー。


「なっ…! お前は…。」



ピエロの仮面をつけていた。




[つづく]

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