第4話
私は京極さん、杉沢さんと別れて五月雨駅へ向かった。
現場に着いた時、駅はすでにパニックをおこした人々で混乱状態になっていた。
電車内にある不審物はやはり爆弾であり、現在爆弾処理が処理にあたっている。
「落ち着いて! 押さないで下さい! 」
私に与えられた仕事は、やはり誘導係。
駅員やアンドロイド達と一緒に駅にいる人達を誘導している。
京極さんと杉沢さんからの連絡はまだない。
「ホームの方を見てきます。」
避難する人が少なくなってきたのを見て私は駅員にそう言う。
「了解です。」
駅員がそう返すのを聞きながら、私はホームへと向かった。
ホームに近づくにつれ、すれ違う人が少なくなる。
ざわめきも段々小さくなり、たどり着いたホームにはもう人はいなかった。
…誰もいない?
そう思うと同時に、何か違和感を感じた。
静かすぎる。
確かにホームに人はいない。
だから静かなのは当たり前だ。
だけど……。
私がそんなことを考えていたその時、突然口元に何かを当てられた。
「っ!? 」
そしてそのまま、私の視界は真っ暗になった。
「く、来るな! 」
咲ちゃんと別れた僕らは、刃物を持って暴れているという人を捕まえにきた。
僕らが現場に着いた時、すでに犯人は何人か切りつけていた。
そして今、僕が警察だと分かった犯人は小学生くらいの女の子を人質にとっている。
「分かったから、その子を離してくれない? 」
そんな会話をする僕達の周りでは、アンドロイド達が被害者の応急処置などをしている。
「そんなことしても、逃げ切れないよ。」
「う、うるさい! いいからお前、動くな! 」
立ち止まったままの僕に、犯人はそう叫ぶ。
人質となっている女の子は、さっきまで泣き叫んでいたが犯人に黙れと言われたので頑張って黙っている。
「あなたに要求があるなら聞くからさ。だからその子を離して。」
僕がそう言っている間に、竜ちゃんが犯人に背後から近づく。
「よ、要求? 要求は…俺を逃がせ! 」
「…ごめん、それ以外で。」
…目的がない?
衝動的な犯行…とか?
「ふざけるな! なんでも聞くって言っただろう! 」
「なんでも、っては言ってないよ。」
「こいつがどうなってもいいのか! 」
そう言って、犯人は女の子に包丁を近づける。
…はぁ……。
「待て! 分かった! 」
「そ、それでいいんだよ。」
そう言って、犯人が女の子から少し包丁を離して気をゆるめた瞬間。
「っ!? 」
竜ちゃんが犯人の背後から腕を捻りあげようとする。
犯人の意識が竜ちゃんにむいた瞬間、僕は人質の女の子を救出した。
「ママぁぁぁぁ! 」
「まみ! 」
解放された女の子とその母親はそう言って抱き合う。
「さてと。」
そう言って僕が再び犯人の方を見ると、竜ちゃんがすでに取りおさえていた。
「おつかれ、竜ちゃん。」
僕はそう言いながら、竜ちゃんの方に歩く。
「お前、交渉へたくそすぎるだろ。…つか、竜ちゃんやめろ。」
呆れと怒りが混ざったような表情をして僕を見上げながら、竜ちゃんはそう言う。
「そんなことないでしょ。隙だってできたし、何より最後の焦った演技はなかなかだったと思うよ。」
「自画自賛かよ。」
僕の言葉を聞いて、竜ちゃんは今度は呆れながらため息をついた。
「おら、立て。」
そして取り押さえていた犯人にそう言って、立たせる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 」
立ち上がりながらそう言う犯人に、僕は手錠をかける。
「俺は頼まれただけなんだ! 金をくれるって言うから、だから…。」
「だから何? どんな言い訳をしても、あなたが今犯罪を起こしたのは事実だよ。」
「ったく…おら、歩け。」
そう言って、竜ちゃんは犯人を連れていこうとする。
「待って竜ちゃん。」
「は? 」
「この人の連行は、あの子達に任せよう。」
僕はそう言って、アンドロイド達を指す。
「僕達は、早く咲ちゃんに合流しなきゃ。君たちー。」
僕が近くにいるアンドロイド達に声をかけると、2体のアンドロイドがきた。
〔オヨビデスカ?〕
「うん。この人の連行、お願い。」
〔リョウカイシマシタ。〕
そう言うと、アンドロイド達は犯人を連行していった。
「あいつのほうも、そろそろ終わってんじゃねぇのか? 」
「うーん、どうだろ。とりあえず無線で聞いてみるよ。」
そんな会話をしながら僕達は歩き出す。
《こちら京極ー。咲ちゃーん、そっちはどうなってる? 》
僕は無線でそう言うが、咲ちゃんからの返事はない。
「…何だって? 」
「いや、まだ何も。竜ちゃんも呼びかけてみたら? 」
《…こちら杉沢。……おい、聞こえてるか。》
竜ちゃんは顔をしかめながらも、無線でそう言うが咲ちゃんは答えない。
「ね? 」
「無視かよ。」
「いや、多分答えられないんじゃないかな。もしくは…。」
「…何だよ。」
僕達の間に、嫌な空気が流れる
「いや、別に。もう少したったら答えられるかもね。とりあえず早く行こう。」
そんな会話をしながら、僕達は五月雨駅へと向かうのだった。
[つづく]
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