第3話ー爆破事件ー
京極さんと杉沢さんが0課に来てから数日がたった。
藤井さんはまだ入院している。
「──今回の連続殺人事件についてだが─。」
今日は3人で捜査会議に出ている。
「─現場付近には左の手の甲に猫のタトゥーをいれた人物が毎回目撃されている。また、最近猫の変死体も頻繁に発見されている。」
殺されたのは、女性2人に男性1人。
3人とも、夜道を歩いている時に襲われた。
3人に共通点はなく、通り魔のような感じだ。
「猫の殺人事件か。どう思う? 2人とも。」
会議中だというのに、そう話しかけてくる京極さん。
「猫の変死体も犯人の仕業だろうな。なに考えてんのかは知らねぇが。」
「だとすれば、猫が好きなのか嫌いなのかよく分からない犯人ですね。」
「確かに。何が目的なんだろうね。」
私達がそんなことを話していると。
《─五月雨(さみだれ)駅に爆破予告。電車内では不審物が発見されています。捜査員は現場に向かって下さい。》
無線に出動命令が流れてきた。
恐らくこの場にいる全員が聞いているはずだが、誰一人として動く気配はない。
…全く、この人達は。
「…行きますよ。」
そんなことを思いながら、私は2人に声をかけ、立ち上がる。
「えっ、でも…。」
「は? 」
2人はそう言って戸惑いながらも、私の後に続いて会議室を出た。
「そ、それは…? 」
「包丁だよ。見ればわかるでしょ。」
薄暗い路地でそんな会話を交わすのは、どこにでもいそうな40代くらいの男と、フードをかぶり、ピエロのお面をつけた男。
「そんなもの…何に……。」
「君、お金が欲しいんでしょ? 」
そう言いながら、ピエロの男はもう一人の男に包丁を差し出す。
「だから僕のところにきた。」
「そう…だが…。」
「そんな難しくないよ。2、3人、人を刺して欲しい。」
「ひ、人を!? 」
驚いている男に、ピエロの男は包丁を押しつける。
「うん。誰でもいいから。」
「か、金はちゃんとくれるんだろうな! 」
「払うよ。んじゃ、よろしくー。」
そう言いながら去っていくピエロの男の後ろで、もう一人の男は持っている包丁を見つめていた。
俺達は今、五月雨駅に向かっている。
爆破予告があったとかなんかでだ。
そのせいで、会議の内容も途中までしか聞けなかった。
「暗黙の了解? 」
「そうです。」
運転しながら聞く俺に、助手席に座っているあいつはそう返す。
いつものように肩より少し短い黒髪を、無線をつけている右の方だけ耳にかけている。
「なんだよそれ。」
あいつが言うには、会議の際に起きた事件は全て0課が対応するというのが暗黙の了解、というものだった。
「まぁまぁ竜ちゃん、咲ちゃんに怒っても仕方ないって。」
後部座席に座っている修一が、そう言う。
「ちっ。」
…だから他の奴等、普通にしてたのか。
俺がそんなことを思っていたその時。
《─三並ノ(みなみの)町で刃物を持った男が暴れているもよう。至急、現場に向かって下さい。》
新たな事件の知らせが入る。
「はぁ!? 」
「うわぁ…しかもまだ終わってないみたいだよ、捜査会議。」
「…何で分かるんですか。」
「これ。」
そう言って、修一は耳につけていたイヤホンを指す。
「盗聴かよ。」
「…後でちゃんと処理しといて下さい。」
「分かってるって。ってか、どうするの? 」
「杉沢さん、車とめてください。」
突然の指示に疑問を持ちながらも、俺は言われたとおりに車をとめる。
「捜査会議が続いているので、どちらの現場にも私達が行くしかありません。」
そう言って、あいつは車を降りる。
つられて俺達も車を降りた。
「なので、杉沢さんと京極さんは三並ノ町に向かって下さい。私は五月雨駅に行きます。」
そう言いながら、あいつは運転席に乗りこむ。
「は? 」
「え、咲ちゃんが1人? 」
「そうです。」
「つか、車使うのかよ。」
「五月雨駅の方が遠いですから。それに、こっちの方は爆弾処理班とかが主に動いてくれるので、仕事は誘導くらいでしょう。とりあえず、早く現場に向かって下さい。」
そう言って、あいつは車を発進させ現場に向かった。
「…んじゃ、俺達も行きますか。」
「ちっ。」
そんなことを言いながら、俺達も現場へと向かうのだった。
[つづく]
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