第55話 陰謀と少女8
次の日、泊まった宿屋で朝食を食べていると、入り口から鎧を着けた大きな人影が入ってきた。
あ、ブルケっていう騎士ね。
「メグミ殿、このような所におられたか」
「「「メグミ様っ!」」」
彼の後ろから、トルネイたちが顔を出す。
みなお揃いの鎧を着けている。
「あれ?
みんな、その鎧は?」
「私たち全員、帝都騎士隊の特別部隊に取りたてられました」
「特別部隊って?」
「竜騎士隊です」
「ま、まさか――」
「はっ、メグミ様のお名前を頂きました」
「……」
なんか、段々大げさなことになってきてない?
それが嫌で、怖い思いをしてまでお城から逃げだしたのに。
「ガハハッ、まあ、許してやれ。
お主の事を慕っての事じゃからの」
ブルケさんが、笑っている。
「とにかく、王都を出るまでは、我らに送らせてくれ」
「……」
「「「メグミ様ー!」」」」
もう、しょうがないか。
「分かりました。
なるべく少ない人数で、お願いしますよ」
「分かっとる」
「山車とか使わないでくださいよ」
「……うむ」
そのちょっとした間は何かしら。
◇
案の定、私の帝都出発は、えらいことになった。
というのが、大きなブルケさんが、私を肩車して街中を練り歩くことになったからだ。
もちろん、私は降ろしてくれるよう叫び続けたが、道いっぱいに集まった人々の歓声で、私の声は目の前にあるブルケさんの耳に届いていないようだ。
こういうとき、いつも私の味方をしてくれるピーちゃんが、なぜか黙ったままだ。
肩車されているから、行きたい方向にも行けず、結局街をぐるりと回ることになった。
帝都から出る門の所でも、一騒動あった。
トルネイたちが、整列したまま号泣しているのだ。
ブルケさんの肩車でエネルギーを遣いはたした私には、何か言う気力も無かった。
「メグミ殿、またおいでくだされ」
大男のブルケさんが、涙をだーっと流している。
ピーちゃんがその肩にとまり、翼でハゲ頭を撫でている。
私以外の人に、そのなことをするピーちゃんは初めてだから驚いた。
「ピー殿も、また帝国に寄ってくだされ」
ブルケさんの言葉にピーちゃんが頷いている。
こ、この二人の関係は何?
こうして、涙を流すおじさんたちに見送られ、アクア、ピーちゃん、私はティーヤムへの道を歩きだした。
何か忘れている気もするけど……。
◇
「エヘヘ、そうなんですよ。
ボクたち、竜騎士様、第一の子分なんです」
「まあ、素敵だわ~」
「そうですよ。
冒険者としても、弟子みたいなものなんですよ」
「へえ、凄いわね~」
綺麗な女性たちに囲まれ、レフとライは、デレデレになっている。
「でも、二人とも、竜騎士様とご一緒しなくてもいいの?」
「ええ、ボクたちは、竜騎士様から認められて――」
「お、おい、ライ!」
「なんだよ、レフ。
今、いいところなんだから」
「ば、馬鹿ッ!
メ、メグミ様はどこだ?」
「えっ……あ、あれっ!?」
「ど、どうしよう。
俺たち置いてかれてるぞ!」
「メ、メグミ様はっ?!」
「あれ?
竜騎士様なら、ずっと前にブルケ将軍と向こうへ行ったわよ」
「「ひいっ!」」
女性たちが最後に見たのは、転ぶように駆けていくレフとライの後姿だった。
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