第50話 陰謀と少女3

 私は噴水に駆けより、アクアを捕まえようとしているおじさんたちに叫んだ。


「やめてっ!

 その子は、私の友達なの!」


 おじさんたちは、私の言葉を理解しなかったようだ。


「うるせえっ!

 妖精が人と友達になるわけねえだろっ」

「そんな小娘ほっといて、とにかく捕まえろ」

「急げっ!」


 私はピーちゃん袋の蓋に手をかけた。

 けれど、ピーちゃんの登場を待たずしてことはおさまった。


 ドバシャーンッ


 そんな音を立て、おじさんたちが噴水プールの中に落ちたのだ。 

 さっきまで三人が立っていた場所には、両手を広げて立っているすごく大きなおじさんがいた。

 頭を剃り上げているおじさんは、白銀の鎧を着ており、その胸には紋章がある。 

 

「お嬢ちゃん、無事か?」


 あれ、このおじさん、私が三人から悪さされているとでも思ったのかもしれないわね。まあ、問題は解決したのだけれど。


「大丈夫です。

 この人たちが、私の友達を捕まえようとしたので……」


 私の話は、トルネイたちの叫び声で途切れてしまった。


「「「ブルケ大将軍!」」」


 何が起きたか分からない私、ライ、レフを残し、残りのおじさんたちが全員地面に膝を着き、頭を下げている。


「うぬ、お主は確か――」


「トリアナン攻めに参加しておりました、トルネイと申します」


「おう、そうじゃったな。

 お主、その恰好はどうした?」


「はっ、我があるじと共に、トリアナン、あっ、今はティーヤムですか、そこから帰って参りました」


「そうか。

 ワシの不徳で、お主らには苦労をかけたのお」


 大きな白い口髭のおじさんが、頭を下げる。


「ブルケ様、お顔を上げてください。

 我ら、将軍の配下として戦えただけで満足です」


「ぬう、まことかたじけないのう。

 ところで、お前の主とやらはどこにおる?」


「はっ、こちらが我が主、竜騎士メグミ様でございます」


「竜騎士!?

 どなたが?」


「こちらでございます」


「こちらと言うが、そちらには噴水しかないではないか」


「いえ、こちらの方が竜騎士でございます」


「おい、それはいたいけな少女じゃぞ」


「は、こちらが竜騎士メグミ様です」


「おい、本気で言うておるのか?」


「紛れもありません。

 ティーヤム国王に竜騎士として認められたメグミ様は、フェーベンクローでも公女様から竜騎士として認められました」


「な、なんじゃと!?

 おい、娘御、こやつの言うことは本当か?」


「ええ、本当ですよ」

「本当だよ」


 私の答えに、袋から顔を出したピーちゃんの声が重なる。  

 

「ド、ドドド、ドラゴーン!」


 ブルケという大きなおじさんが、尻もちを着いた。

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