苦しみの始まり

陸翔視点


『ゲーム開始まで残り1分』


陸翔「そろそろ始まるな………全員携帯持ってて電波がなくても使えるなら連絡を取り合った方がいいぞ だが音は消しておけよ」


陸翔 音は一瞬でも気が付くやつは気がつくからな………


『ゲームスタート』


裕翔「今度はどこだ………?」


陸翔「室内だから音を立てずになにか使えそうなものを持っていこう」


ゲームがスタートしまた室内にいる裕翔と陸翔はその場にあるものを探すと………


陸翔「武器と防具があるな………使えるか?」


裕翔「多分………」


陸翔が武器と防具を発見し防具の着方を教えつつ複雑な武器の使い方も伝授


裕翔「陸翔さん 陸翔さんさっき………」


陸翔「裕翔 しっ」


裕翔が陸翔に質問をしようとすると陸翔が何かに気が付き静かに身を隠す


クリーチャー「ぐるるるる………」


陸翔 やっぱり来たか………音のする方に来るとはいえあのタイプは液体を吐くから厄介だな


陸翔は聞き慣れた足音が近づいてくるのに気が付き裕翔を護った


クリーチャー「ぐるる………」


陸翔 行ったな………そろそろ行くか


裕翔「…………」


陸翔「あいつは1度来た場所は来ないから大丈夫だ 行こう」


陸翔が怯えている裕翔を引っ張りつつ武器を構えながら静かに且つ早く歩く


『父さん!!』


陸翔「っ!」


裕翔「陸翔さん……!?」


『大佐!しっかりしてください大佐!!』


陸翔の頭の中で仲間の声が………愛する息子の声が響き陸翔は頭を抱えて倒れる


『父さん!!!』


息子の悲痛な叫びが………


『大佐!!!』


部下達の叫びが………


陸翔「「Szea(スフィーア)」………」


※「スフィーア」とは陸翔が育てた精鋭部隊でそこに息子も所属していた


裕翔「陸翔さん………?」


陸翔「スフィーア………」


陸翔 本当は死にたくなかった……もっと一緒に居たかった


陸翔は自我を失った状態で泣いていた………愛する息子を残して………信頼した部下達を残して………1人死んで逝くのは本当は嫌だったのだ………しかし身体が先に動いていた以上それは無理な話………


陸翔「…………?」


裕翔「陸翔さん?大丈夫ですか?」


陸翔「?何が?」


数分後 自我の戻った陸翔は自分が床に横になっている理由がわからず不思議そうな顔をする


裕翔「え?」


陸翔「?」


裕翔「(もしかして記憶が無いのか?)」


裕翔は陸翔には記憶がないと判断しつつ陸翔に手を貸してまた一緒に歩き出す


裕翔「スフィーアって陸翔さんの部隊ですか?」


陸翔「よく知ってるな」


裕翔「さっき床に頭を抱え手倒れた時にそう言っていたんです 陸翔さんは覚えていないようですが」


陸翔「………多分自我をなくしてた」


裕翔に言われて自分で頭を触った感覚があるのでその言葉を正直に受け止める


陸翔「裕翔 こっちだ」


裕翔「真っ直ぐではなくて?」


陸翔「真っ直ぐ行くと罠がある こっちに行けば罠はないがクリーチャーがいる危険性がある」


裕翔「だから武器があったんですか………」


陸翔はその場所の地形に詳しかった………恐らく何度もここで死に物狂いで逃げたのだろう


クリーチャー「ぐるるるる」


ふと道なりに沿って歩いていくとクリーチャーがいて一旦停止


陸翔「あのタイプは音さえ出さなければ近寄ってこない 近くを通る時は要注意だがそこだけ注意すればいい」


裕翔「もしバレたら?」


陸翔「死ぬ気で走れ」


陸翔にそう言われてしまえばバレた場合は死ぬ気で走るしかない


クリーチャー「ぐるるるる」


2人「…………」


2人は身を低くして音を立てないようにゆっくりとクリーチャーの横を通り過ぎる


陸翔「(なんとか通り過ぎたな……それなら………)」


陸翔は裕翔となんとかクリーチャーの横を通り過ぎ銃にサプレッサーを付ける


「ドカァァァン!!!」


クリーチャー「ぐるるるる」


陸翔は銃を使って罠を発動させクリーチャーを音のした方へ


凪咲「裕翔………!」


陸翔「きたきた」


裕翔「もしかして分かってたんですか?」


陸翔「そりゃな 音聞こえたし」


陸翔 耳と目と記憶力はいいんだよな………


そんなことを思いつつ陸翔は裕翔達を連れて人を助けつつゴールへ


???「…………」


陸翔「…………」


???「…………千薙大佐」


陸翔「…………」


凪咲達が助けた人は陸翔が「スフィーア」で育て上げた隊員で陸翔を「大佐」と呼ぶ


陸翔「………九条 暁夜(くじょう あきや)隊員………お前 あの時クリアをしたんじゃないのか」


暁夜「クリア出来ませんでした 大佐が亡くなった直後にクリーチャーに襲われて」


陸翔「…………」


暁夜「何故 あの日俺達に何も言わずに消えたんですか!!大佐!!!」


陸翔が無言になって少しの沈黙の後暁夜に胸ぐらを掴まれて陸翔はそう言われる………すると気持ちが爆発したのか陸翔も涙を流し出す


陸翔「俺だってあんなことしたくなかった………」


暁夜「…………」


陸翔「だがああするしかお前達を護る術がなかった………!がんの末期を宣告され敵に脅迫され息子とお前達を殺すとまで言われた!スフィーアは俺の宝だ!!息子は勿論部下であるお前達も俺の宝の1つだ!!そんな大事なものを無残に壊されてたまるか!!!」


暁夜「…………」


それは陸斗の本音だった………がんの末期と申告され余命宣告もされたあとに敵からの脅迫………陸翔は大切なものを守る為には何も言わずに姿を消す他なかった


暁夜「………やっぱり大佐は大佐ですね」


暁夜は少しの沈黙の後そう言って手を離し陸翔の涙を拭ってから持っていたものを渡す


陸翔「………俺の服か」


暁夜「道中発見しまして」


暁夜から発見した上下セットの服を受け取った陸翔はゴールの部屋でトイレで着替える


琉海(るい)「かっこいい………」


戦闘服であろう陸翔の服は腕の部分に部隊名が刺繍されており、更にその上に「Captain」の刺繍が入っていて隊長であったのは一目瞭然


暁夜「我らが大佐はそうでなくては」


陸翔「お前俺を試したろ」


暁夜「何のことでしょう?」


陸翔「お前らしいよ」


その時 漸く険しい顔で常に苦しそうな顔をしていた陸翔の顔に笑顔が出た


陸翔「………暁夜」


暁夜「はい」


陸翔「………陸也は………どうなった」


暁夜「分かりません………もしゲームオーバーになっているのでしたら我々と同じかと思われます」


陸翔にとって息子は大切な存在であり自分を保てる唯一の糧なのだ


陸翔「恐らく次のゲームは1日経った後だな」


そう言って陸翔は壁に寄りかかり出して目を閉じる


陸翔「そろそろ強制的に寝かされるだろうから寝た方がいいぞ」


そう言って陸翔はそのまま寝だしてしまい他の人達も寝だす


〜夜〜


クリーチャー「…………」


陸翔「…………」


「ヒタッ」


陸翔「!!!」


夜 陸翔は条件反射で飛び起きて武器を構えるが………その場所は暗い場所ではなく明るくとある一点に大量の血液が残る場所だった


クリーチャー「覚えているか?この場所を」


陸翔「?!」


クリーチャー「久しぶりだな 陸翔?」


クリーチャーが人の言葉を話すなど聞いたことのなかった陸翔は、無意識でクリーチャーに武器をつけたがクリーチャーの方が上手で武器を弾かれた上に、クリーチャーの声を聞いたのことのあった陸翔は身構えてしまう


陸翔「………黒羽気(くろはき)」


クリーチャー「正解 流石に覚えてたか」


『父さん!!』


陸翔「!!??」


不意に陸翔のまともな意識がある内に息子の声が聞こえ陸翔は驚きと震えで膝から崩れ落ちる


『大佐!しっかりしてください大佐!!』


陸翔「っ………」


クリーチャー「後ろを見てみろ」


陸翔「嫌………だ………」


陸翔は自分の後ろで何が起きているかを察していた………故にクリーチャーの言葉を拒否するがクリーチャーは無理矢理見させる


陸翔「っ!!!」


陸翔『陸……也………』


『父さん!』


陸翔『………ごめん………な…………』


クリーチャーは陸翔が死ぬ所を幻覚で見させていた………口と腹から大量の血が流れ死ぬ間際になっている陸翔と今の自分………陸翔にとって誰よりも悲しませたくなかった息子と部下達の悲しむ姿を見させられていて………


陸翔「やめて………くれ………」


『父さん!!!』


『大佐!!!』


息子と部下達の叫びが耳と頭に響く………泣いている声も全て聞こえる


『なんで父さんが死ななければならないんだ………!!!』


『大佐………!!しっかりしてください大佐!!!』


陸翔『………ごめん………』


陸翔「やめてくれ!!!」


陸翔は死の間際謝ることしか出来なかった………血で濡れた手で息子に触れようとして叶わずそのまま死んだ………


クリーチャー「滑稽だな 陸翔」


クリーチャーはそう言って陸翔の首を掴み無理矢理口を開けさせる


クリーチャー「お前は毎度選択を誤る だから矯正してやる」


陸翔「やめろ…………嫌だ……!!」


陸翔 またあの痛みを感じたくない………!!


陸翔は生前クリーチャーに何度も直接液体を流し込まれた過去があり、その全てが副作用が強すぎて頭痛や嘔吐感、腹痛、発熱と言った症状が現れ、がんを隠して治療をしていなかった頃よりも痛みが強い


クリーチャー「残念だが聞けない相談だな」


陸翔「!!!」


クリーチャーは管状になっている下で陸翔の食道に容赦なく液体を流し込み、陸翔は暴れれば液体のランクが上がると知っていても暴れてしまい、量もランクも上がり酸欠のまま直接胃や腸の中に液体を流し込まれ、更に暴れる


陸翔「ぅあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!」


クリーチャー「聞き分けの悪いやつだな」


陸翔「っ!!!!!」


クリーチャーも陸翔が暴れると分かっていてわざと直接液体を流し込んでいるのだが、一向に暴れないということを覚えない身体を痛めつけるかのように、口元に当てていた手で陸翔の首を絞め空いている手で容赦なく腹を押す


陸翔「がっ………あ゙っ………」


クリーチャー「そろそろイイか」


漸く暴れなくなった陸翔に気を良くしたクリーチャーは液体を流し込むのをやめ、陸翔を解放するが………陸翔は体力の液体を流し込まれた上に腹が膨れ呼吸困難も起こしほぼ意識がない


クリーチャー「次は暴れるなよ」


それだけ言ってクリーチャーは消えて陸翔も完全に意識が途切れる



裕翔「陸翔さん!陸翔さんったら!!!」


暁夜「大佐!!」


亮尚「駄目だ意識が戻らない……!」


現実世界ではクリーチャーに液体を飲まされた陸翔を必死に起こそうと3人が奮闘


暁夜「不可抗力です………大佐 後に説教は聞きます!」


一向に意識が戻らず液体によって腹が膨れている陸翔の肋骨を折る勢いで暁夜が肘打ち


「ボキッ」


陸翔「ゴホッ………ゲホゲホ!………裕翔………?」


すると嫌な音はしたが陸翔の意識が戻り起き上がった直後にトイレに駆け込み嘔吐


陸翔「ゲボッ………」


恐ろしい位に懐かしく感じてしまうそれに陸翔は体が慣れてしまっているのを知る………


毎夜行われるであろう矯正するための液体注入に陸翔は絶望した………



陸翔の苦痛は始まったばかり………

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