午後の紅茶と牧野田
キリンビバレッジの午後ティー女子についての事件(というほどでもないが)が少しだけ世間を賑わせている。
簡単に言うと、午後の紅茶を飲んでいる人はこんな感じ、というように受け止められたキリンビバレッジのTwitterが炎上したということらしい。
ぼくが中学生のころ、クラスに牧野田という女子がいた。
そいつは、プレゼントにもらったファッショングラスを、そのまま別の人へのプレゼントにして渡すという、なんとも大胆不敵な行動に出たせいで、女子たちから大変激しいバッシングを受けるような人だったのだが、その話はまた別の機会にする。
クラスの「お楽しみ会」みたいなのが開催されたとき、担任が飲み物を買ってきた。午後の紅茶3種類だ。
当時はノンシュガーは登場していなかったので、三種類。
ぼくは、その午後の紅茶を配る際にトイレに行ってしまっていた為に、タイミング的に出遅れ、既に残っているのは少なかった。ひとつのレジ袋は既に空になっており、残っている袋が目についたので、その中から1本のペットボトルを掴んだ。
と同時に、それに異を唱えてきた女がいた。
牧野田だった。
「それ、私が飲もうと思ってたんだけど」
なんだ?おめーの机の上に置いてあるものをオレが掴んだらそう言ってもおかしくないが、オレはスーパーのレジ袋から掴んだのだ。お楽しみ会を取り仕切っていた、当時の係、「集会係」の冨永くんにも確認済みだ。そこから1本持っていけと言われたからそうした。
それをなんだ?よこせということか。
ぼくは、当時、と言っても現在でもそれほどキリンの午後の紅茶について特別なこだわりがあるわけではないので、レモンティーだろうがストレートティーだろうがミルクティーだろうがなんでもよかったのだ。
その譲られて当たり前みたいな、さも初めから自分のものと決まっていたかのようなものの言い方にカチンときつつも、ぼくは黙ってその一度は掴んだミルクティーを牧野田に渡し、新たに別の場所にあったレジ袋からストレートティーを1本掴み、席に戻った。
その時、初めて午後の紅茶のいう飲み物を飲んだ。
以降、ストレートティー、ミルクティー、レモンティーと全ての味を制覇したが、個人的にはミルクティーがいちばんおいしいような気がする。
味覚障害で、嫌いなものでなければだいたいはなんでもおいしく感じてしまう、回転寿司のハンバーグ、ツナやコーンなんかがいちばん好きな、安くポンコツな舌を持つぼくのような人間の評価なんて全く当てにならないと思うが。
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