「インフルエンザと突然死の恐怖」
先週の木曜日から、著しく体調を崩して、職場を休んでいる。
その日も、ずいぶんと忙しく過ごして午後3時を回った頃だろうか。ぼくは、自分の体のちょっとした異変を感じた。
「なんか、喉がイガイガするなあ」
廊下で一人思いつつ、会議の場所へ向かった。
着席して15分たっただろうか、ずいぶん気持ちが悪いことに気づいた。
「なんだこれ?」
不安を打ち消すように、声にならない言葉を胸の内で呟いて、大きく首を回した。
一向に良くならない体調は、さらに悪化の一途を辿る。
かつてないほどの悪寒を感じたぼくは、迷わず早退することを決め、上司に報告してから職場を出た。
帰りがけに、駅チカにあって、ちょっと具合悪い時に寄るとなんだかんだ言ってすぐロキソニンと抗生剤を処方してくれる、ぼく好みの内科で診察を受けた。
受付で熱を測ったところ、早くも38.7℃というハイスコアをいきなり叩き出してしまい、閉院間際のクリニックをざわつかせた。
看護婦さんたちの頭には、当然「インフルエンザ」のことがあっただろう。
ものすごい勢いでマスクを差し出してきた。
普段、全く影響力のないぼくが、負の方向に影響力が発揮された瞬間だった。
診察としては、風邪だろうとのことだったが、こんだけ急に発熱しているのだから、インフルエンザかもしれない。しかし、発症してからすぐで検査しても検出できないだろうから、ということで検査はなかった。
会計を待っている間や、薬局での時間、つらくて何度も地面に横になりそうになるのを必死でこらえ、ようやく自宅マンションに着いた。
うがい手洗いを済ませ、隅っこに置いてあるローベッドにようやく横になり、恐る恐るテルモの体温計を手に取った。
音が鳴って、液晶画面を覗いて見たら、今度は目の錯覚なのか、39℃という文字が見えた気がした。
落ち着いて体温計を取り出し、明るいところでちゃんと見てみると、39.1℃と表示されている。
「ああこれは、とてもじゃないがたいへんなことになった」
瞬時にそう思った。
この家には、ぼく1人しかいない。
他に誰もいない。
見えないだけかもしれないけど、とりあえず見える人はぼくしかいない。
もし、インフルエンザや突然の心筋梗塞などで急死してしまったら、ぼくはどうなるのだろう、と突然、心配になる。部屋の片付けだってやってない。このまま死んだらたいへんだ!
死んだ後の部屋については、どれぐらい後になるかわからないが、とおるちゃんのことを書こうと思っているので、今は書かないでおく。
実家暮らしで親がいたりすれば、ものすごく体調が悪くなっても救急車とか呼んでもらえそうだが、一人じゃどうなるんだろう。たぶん、一番最初に異変に気づくのは職場の上司だろう。
無断欠勤が三日ほど続いている、今までこういったとこはなかった、ということで自宅を訪問するだろう。管理人と一緒か、もしくは鍵を借りてぼくの部屋に入るだろう。そこで、変わり果てたぼくを発見するのだろう。
・・・という最悪のシナリオをつい考えてしまう。
やっぱり、1人で住んでるよりは誰かと一緒に住んでいたほうがいいなぁ。
※翌日の検査でインフルエンザA型であることが判明しました。
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