「ヘッドフォンをする理由」
ぼくは、辺鄙な地方の生まれ育ちなので、東京に来たときは驚いた。
上野駅だった。中央改札を出たところは、人が誰もいなければすごく広い空間なんだろうが、人で埋め尽くされていて、しかもそれらが独自に、自らの意思をもって様々な方向へ移動し、会話していることに驚愕して、何故か怯えた。
自分の故郷で、こんなに人が集まるのは、お祭りか初詣のような感じだから、来るたびに人がたくさん蠢いている上野では、お祭りがずいぶんたくさん開かれているんだなぁと感心していた。
実際はいつでも混んでいるだけだったのだが。
東京は、さすが日本の首都だ。公共交通機関が発達していて、どこに行くにもほとんど困らない。
ぼくの実家がある地方は、カンペキに車社会で、一人1台と言っていいほどだ。
都会なら、歩いていくようなコンビニでさえ、車で行っちゃう。
地方の人ほど体力ありそうな感じがするけど、地方の人ほど車に乗って移動する機会が多いので、たいして歩いていないのだ。
都会人は、駅までは歩くけど、地方人は、車でほとんどDOOR to DOORだから、歩かない人がかなりいそうだ。
高齢者の足腰弱り率も、地方の方が高いんじゃないか?
そんな公共交通機関を利用していると、ほとんどの人はヘッドフォンをしているか、イヤフォンをしている。ぼくが地方に住んでいたときは、いったい移動中まで何を聴きたくてイヤフォンしているのか不思議だった。
じゃあ、地方の人は移動中に音楽を聞かないのか?
そんなことはない。車の中でみんな聞いている。ヘッドフォンとかを使わないだけだ。
車の中は、パーソナルな空間だから、動く自分の部屋みたいな感覚になる。だからこそ、こだわりのカーコロン、ぬいぐるみ、シフトカバーにハンドルカバー、内装や車内に置くグッズもこだわりのあるものが多くなる。自分の部屋でヘッドフォンで音楽聞くなんてやつはそうそういないし、だいいち、多分道路交通法違反だ。
都会の人は電車やバスだから、そうはいかない。
音楽等を聴くには、ヘッドフォンやイヤフォンを使わなければならない。
そうまでして聞きたいものなのか?
と、ずっと疑問に思ってきた。
いま、自分が東京に住み、公共交通機関を利用して移動するようになり、わかったことがある。
他の人は知らないが、少なくてもぼくは、朝から音楽を聞いて出かけなくても困らない。しかし、電車に乗ってたりすると、周りの人たちの聞きたくもない愚痴や、惚気や、どうでもいい話なんかが洪水のように耳に入ってきて、頭の中で処理しようとしてしまう。
それがたまらなくイヤで、ついイヤフォンでヘビーメタルやスラッシュメタルの曲を聞いてしまう。
もちろん、X JAPANだってそのリストの中にはちゃんと入っている。
ぼくのリストの一番最後は、いつだって「Silent Jealousy」だ。
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