電話ボックス
小春日和に誘われて、
コートを脱いだ街並みを歩いた時だ。
ある変化に足が止まる。
あそこには、良く利用していた
電話ボックスがあったのに。
携帯電話が無かった頃、
言葉と心を通わせる
キューピットになってくれたのは彼だった。
日々の他愛ないことを話す僕を包み、
聞き耳を立てながらも口の堅かったあいつ。
甘い言葉からデートの予定に至るまで、
事細かに把握していたはずだ。
あいつが繋いだ彼女との待ち合わせは、
いつも僕が待つ側。
けれどその間には、
話すべきあれこれに想像を巡らせ、
退屈だなんて感じる暇もなくて。
そうして彼女を迎え、こう答えるんだ。
「僕も、今来たところだよ」
あいつは次の縁を結ぶため、
別の街へ行ったに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます