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「銀、落ち着け! 俺は何もされてないし同好会の顧問を頼まれていただけだ!!」
「顧問を……?」
じろり、とこっちを睨む目と黒崎先生を見る目が明らかに違う。
「俺、なんでこんな役割ばっかり……」
「よしよし……黄瀬、災難だったな」
さすがにショックを隠せない黄瀬を出来るだけ優しく撫でた。可哀相過ぎる。
「お前も謝れ、銀!」
「せ、先生~……」
どうやら、見た所この銀は黒崎先生には弱いみたいだ。
緑川も気付いたらしく、眼鏡が邪悪に光った気がした。
そして黄瀬が悪寒を感じたのかビクッとした。
「……すぐ他人に暴力をふるう……銀さんはどうやらかなり素行が悪いようですね」
「んだと!?」
「そこでです、先生。我等がヒーロー同好会に彼も入部させてはいかがですか?」
あくまでにこやかに爽やかに、裏などないような笑顔で。
「なんだコイツ、それにヒーロー同好会って……」
「名前は変わっているが実質的にはボランティアをする同好会だそうだ。お前、入ってみたらどうだ?」
間違ってはいない。嘘は吐いていない。
ただ、メンバーが強烈過ぎるだけで。
「なんで俺がそんな怪しい同好会にっ……」
「そうだ、そうしよう! 俺も顧問やるから、一緒に頑張ろうな♪」
黒崎先生は緑川とは違い邪気も裏もないような笑顔で銀を見上げた。
……八重歯が眩しいぜ、先生。
「……せ、先生が、そう言うなら……」
「ありゃ、黒崎先生には素直なんだね?」
「だ、だってよぉ、黒崎先生は……」
もじもじしながらチラッと黒崎先生を見る銀。
どうでもいいけど態度違い過ぎないか?
「黒崎先生……すげぇ可愛いじゃねーか」
「「「……は?」」」
俺と黄瀬と黒崎先生の声が見事にハモった。
聞き違いでなければコイツは今……いや、確かにどちらかと言えば可愛いに分類される容姿だけれども。
「だってこんなにちっちゃいのに大人なんだぜ? 黒板の文字消そうとしても届かなくてジャンプしてるしサイズ妥協して着た服がぶかぶかで袖からちょこっと見える手がこれまたちっさくて可愛かったり髪の毛もふわふわでなんか小動物みたいだし」
「わかった。わかったから落ち着け頼む止まってくれ銀!」
放って置いたらいくらでも先生の可愛さを語りそうな銀を慌てて止める。
「これは……この頃流行りのボォイズラヴとかいうヤツか?」
「どこでそんな言葉覚えたんだよ赤井!?」
赤井の発言にも軽くショックを受けつつ視線を銀に戻す。
すると銀は熱く語っていた所から一転、真面目な表情になって、
「……それに、黒崎先生は……わざわざ俺の前の学校まで行って、俺の停学の理由を調べて、正面から向き合ってくれたんだ。前の学校、結構遠いのに……」
「見た目によらず熱血な先生なんですね。電話で聞けば済むのに」
「そ……それは、やっぱり直接見聞きしないと、ホントの事はわからないと思ってだな……っ」
それで銀は黒崎先生に心を開いた訳か。
喧嘩で停学、なんて聞いたらそれだけで避けてしまいそうだけど……
「ちょっと誤解されやすいけど、いいヤツなんだ。だから、よろしくな」
「センセぇ……っ」
目の前にいる銀は、たぶん黒崎先生の言う通りいいヤツなんだと思う。
俺もちょっと誤解してたな。
「……誤解に関してはテメェもおあいこだ。ったくよぉ……」
「あ、ああ。ゴメンな」
黄瀬がぎろりと銀を睨む。
「そうだよね、銀君も黄瀬のこと誤解したよね?」
「もうこちらには見た目で誤解されるのに慣れた人がいます。中身は人見知りの恥ずかしがり屋で可愛いモノ好きなのですが☆」
「テメェ何どさくさにバラしてんだよ!?」
可愛いモノ好き、と聞いた銀がすかさず黒崎先生をギュッと抱き寄せて黄瀬を見て、
「せ、先生は俺のだからな!」
「誰がお前のだっ!」
……そ、尊敬、だよな?
ちょっと心開いて懐いてるだけだよな?
「この頃流行りのボォイズラヴ……か」
「ボォイズラヴ言うなぁぁ!!」
あー、なんかまた変なのが増えた。
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