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……で、朱堂率いるブレイブVとかいう他校のアホ連中が俺達に勝負を挑んできた訳だが。
「勝負方法は?」
「勝負は五回、それぞれ一人ずつ対決するんだ。ちょうど同じ色がいるからな」
藍原は二枚目を崩さずに解説した。俺はというと、こっちのブルーはツッコミ役は期待出来なさそうだな、なんて事を考えていた。
「まずはゆけぇい! ブレイブグリーン、若草弾!!」
「ならばこちらも頼む! ジャスティスグリーン、緑川護っ!!」
呼ばれて、それぞれが一歩踏み出した。
「ん~、この人なんか強そうなんだけど……違う意味で」
「いえいえ、僕なんてとてもとても☆」
ニコッ、なんて爽やかスマイルで応える緑川。実態を知っている俺達としてはそれがうさん臭く見えた。
「うちのグリーンは強いぞ! 普段こそ自分からは動かないが、いざとなると手段を選ばず相手を絶望の底に叩き落とすのだ!!」
「嫌だなぁ赤井さん、人聞きの悪い★」
いつの間にか爽やかスマイルは真っ黒スマイルに変わっていた。
禍々しいモノを背後から漂わせ眼鏡を光らせる様は……すみません貴方どこの悪役ですか。
すると若草は後退り、朱堂に耳打ちした。
「…………あの、朱堂……棄権してイイ?」
「なんだとぅ!? 諦めるのか地味地味グリーン!!」
「勝負が何であれ、勝てる気しないもん。泣いても許してくれないどころか笑顔で追い討ちくらい普通にやりそうだし……」
あ、うん。正解。
「緑川は心を抉るスペシャリストだしな」
「黄瀬さん、後でちょっとお話があるのですが……」
「うっ……」
黄瀬……雉も鳴かずば撃たれまいって言葉知ってるか?
「朱堂! 仲間を危険から守るのもリーダーとしての務めだぞ!!」
赤井が珍しく正論で攻める。
朱堂は苦々しい顔をしていたが、やがてガックリとうなだれた。
「うぐぐ……わかった」
「た、助かった~……」
若草が安堵の息を漏らす。
あっちのグリーンは常識人っぽいな。
「残念ですねぇ、なかなか苛め甲斐がありそうでしたが★」
……うん、ホント、戦わなくて良かった。
で、次の対決は。
「次はお前だ、ジャスティスイエロー、黄瀬勇!」
「迎え撃てぇい、ブレイブイエロー、山吹賛!」
そうして出て来たのは一番大柄な黄瀬と小柄な少女、山吹。
そう言えば殆ど喋ってないな、この子。
「頑張って、山吹さん!」
「……………………」
桃井の応援に無言で頷く山吹。
またいまひとつ掴めないキャラが来たなぁ……
「しかし向こうは女の子が二人か……やっぱり華やかだな」
「フ……こちらは共学だからな」
「ククッ、いいだろォォォォォう! 羨ましいかァァァ?」
藍原がいちいちニヒルで朱堂がいちいちうるさい。
……まぁ全く羨ましくないと言えば嘘になるが。
対決する当の本人達はというと……黄瀬がすごくやりにくそうだ。
「あ……その……何だ……」
「…………よろしく」
「うぉ!?」
ようやく喋った山吹が手を差し出すと、黄瀬は飛び退いて逃げる。
一体どうしたのか……
「それは僕が説明しましょう」
人のモノローグを読むな緑川。
「黄瀬さんは元々その大柄強面な外見に加え極度のコミュニケーション能力不足により長い間友達がいませんでした」
うわ、ひでぇ言われ様。
「最近でこそ僕達との交流で少しはマシになったものの、身にしみついた人見知りはすぐには治らず……まして相手は女の子。黄瀬さんにはいろんな意味でハードルが高過ぎるのかと」
「あー、こっちは男子校だしな」
つまりは対決以前の問題、と。
緑川が解説している間にも山吹が近付けば黄瀬が逃げ、また山吹が近付くエンドレス追い掛けっこが続いている。
「……この人、おもしろい……」
「あ、山吹さん楽しそう」
「僕には無表情にしか見えないんだけど?」
大丈夫、俺もだ桜庭。
「今度は貴様が棄権する側になったようだなァァァ?」
「仕方あるまい……まだ次があるしな」
二回戦目はこっちの負け。
しかし何なんだろう、このバトルは……
「お、終わったなら早くコイツを遠ざけてくれー!!」
「…………♪」
あ、まだやってる。
女の子に追い回されて黄瀬は半泣きだった。
「これは面白いモノが見られましたねぇ★」
「緑川、お前……」
やっぱり一番恐ろしいのはコイツなんだろうな、と改めて俺は思うのだった。
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