第2話


木で建てられた古風な街並みと、その手前を横切っていく不思議な姿の人たち。

あたりは、もう夜だということを感じさせないくらいに賑わっていた。


のれんの掛かった店らしき建物の二回は、色とりどりの提灯で色づいて、紺色の空にはカラス

…の羽を持った何かが飛んでいる。


「私、帰らなきゃ。」

私が はっ として元来た道を振り返ると、そこはただの木の板で出来た壁になっていた。


「どうなってんの、これ…」


私は唖然として口を開いたままつっ立った。

何が起こったのか全く理解できず、頭の中がぐるぐるする。

試しに壁を触ってみたけど、向こうへ抜けられる気配はない。


『どけ、どけえい!!』

横から声がして、ドンッ

と私とぶつかった。

いてて…

『ちっ、いてえじゃねえか!』

ふんっと鼻を鳴らしてどすどす歩いていく男が、カエルの見た目をしていたのに驚いて声も出せずにそのまま座り込む。


ここは、もしかして夢の中…?

私は自分のほっぺたを自分の手で

ぎーーっと引っ張った。

けど、自分が傷つくばかりで夢から覚めたりなんてしない。


『君、何やってんの。』

ふいに、誰かに左腕をぐいっと持ち上げられて、無理矢理その場に立たされた。

顔を上げると、目の細いキツネの耳を持つ青年がこちらをじっと見つめている。

なんと答えたらいいのだろうか…私が固まっていると、キツネの青年はすーっと鼻から息を吸い込んだ。


『あれ、もしかして、君って人間?』

この質問に、

私が何かまずいことを答えて、悪い方向にことが運ばないようにと、とりあえずこくりと頷いた。

『どうりで人間くさいと思った。ここに居たら変な奴らに喰われちゃうよ?』

く、喰う…?

私が青ざめると、

『あはは、大丈夫 大丈夫。』

と笑われた。一体何が大丈夫だというのか。こっちは全然笑えないよ!

「何が…」

私が口を開いた途端、すっと気づかないうちに距離を詰められていた。


『僕が…、君を助けてあげる。』


…え?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る