第42話 浜辺には、いくつの足跡があったのか?
鴎の目撃報告によると鴎が事件を
猿さんは赤鬼さんからすこし離れた場所で自分のお尻や背中を叩いていたという。
犬さんは砂浜に穴を掘っていた。
じつはこれは鴎が
ということで鴎は自分自身の目で赤鬼さんの遺体を発見してから初めて彼らに声をかけたということになる。
つまりは最初の発見から声かけまでには多少の時差があったのだ。
鴎が声をかける直前の状況は全員が赤鬼さんの周囲に集まっていて鴎が声をかけた瞬間に桃太郎さんは崖に向かって歩きはじめたということだ。
今回、仮に桃太郎さんがなにかの理由で赤鬼さんを切り殺したのであればまだ帯刀者の一存ということで決着がつく。
けれども現状は桃太郎さんたちが上陸したときにすでに赤鬼さんは死んでいたということになる。
仇討申請の提出もされていないいわば無許可の殺しだ。
さらに殺害方法も撲殺。
鬼ヶ島にいる
ひどい話なのだけれど赤鬼さんはその外見からか人間に恐れられることも多く御上への苦情も多かった。
それでも人間いや、ほかの動物にもいっさいの危害を加えたことはない。
気がかりがあるとすれば、やはり僕ら鬼族のサガなのか激情家ということだ。
いままで吠えることのなかった犬が、初めて人を噛むそんなことだって世の中にはあるだろう。
となれば赤鬼さんの手下からのクーデターも考えられるが一匹狼でほかに仲間はいなかった。
いま、この砂浜に残っている足跡は僕、赤鬼さん、桃太郎さん、その家来である、雉さん、猿さん、犬さんの合わせて六つ。
これは鴎のメモと照らし合わせれば簡単に抽出できた。
僕は当然、自分の足の形を把握しているだから僕の足跡がひとつ。
そう草履の足跡。
鬼属特有の
僕とは別の草履の足跡、これは桃太郎さんの足跡だ。
僕よりもすこし小さいから判別がつく。
鳥属の四本の爪は雉さん。
五本の指が猿さん。
前が五本指でうしろが四本指、それでいて四足歩行をするのは犬さん。
そう、六人の……いや、う~ん、そうだな……。
厳密にいえばあの小さな点々とした跡も足跡だ。
それも含めよう、それを入れれば七つだ。
誰の足跡か? それはそうあの物言わぬ子蟹さんの足跡だ。
船頭さんは鬼ヶ島から本土に帰っていった者は誰もいないといっていた。
となると単純に考えて、このなかに赤鬼さんを殺した犯人がいるということになる。
空からの侵入者が犯人という可能性は金棒という凶器がある時点で否定される。
両翼を持つ者は大きな物をつかむことができないのだ。
ということで雉さんには不可能。
ちなみに鴎は物の怪の擬人化能力によって人になれるだけだ。
さらに、犬さんの四本足でもあの金棒を持つのは不可能だろう。
そしてあの小さな子蟹にも無理だ。
そうなると桃太郎さんか、猿さんが犯人ということになる。
心のなかにふと疑問がわき上がるあまりに被疑者の候補がすくない……。
ほかに誰かが隠れている可能性……それもない。
なぜなら足跡がないからだ。
やはり被疑者の数が……気のせいならばいいのだけれど、まあ、これはあくまで僕の心証だ。
僕の見立てによると鴎の通報とこの遺体の状況から見て死亡推定時刻はいまから、約一時間前。
僕はまず
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