第3話 涙と旅出

お互いに謝り合い、わだかまりの溶けた俺達は真っ白い奴に連れられて、ヒトの作ったこの施設――――『ゆうえんち』を歩いていた。

ちなみにボスはいない。会った時と同じようにジャパリまんを配りにどこかへテクテクと去っていくボスに俺たちは礼を言って別れたのだ。


「さっきも思ってたんだけど、ヒトが造った施設にしてはヒトの痕跡がまるで見当たらないな」

「うむ、そうじゃな。募る疑問もあるじゃろうが、まずは自己紹介といかんか?」

「そうですね…………そういえば、さっきのごたごたですっかり忘れてました」


そして自己紹介タイムが始まった。


「私はアードウルフのフレンズです。あ、改めて、よろしくお願いします」


最初に口を開いたのは意外にもアードだった。いつもの口調からしていかにも臆病で内向的な性格に見えるが、案外こういうところの社交性はしっかりしているようだ。


「俺はレオ。バーバリライオン……? のフレンズだ。よろしく」


それに続くように俺も軽く自己紹介をした。というか、目覚めたのがつい先ほどだからこれ以上喋ることもないのだが。

それと、何のフレンズなのかは夢の中に出てきたヒトが俺達に向かって言っていた単語だから多分あっていると思う。


「…………レオ?この娘、レオと名乗ったのか? しかし、うむ……」

「あの、どうされたんですか……?」


なぜか俺の自己紹介を聞いて、真っ白い奴は戸惑いを隠せない表情で急に独り言をつぶやきだした。そして、それを見たアードが遠慮がちに突っ込んだ。


「……ああ、すまぬ、いらぬ考え事をしておった。先に断っておくが決して聞いておらんかったわけではないぞ。気を悪くせんでくれ。」

「コホン、儂はニホンスピッツのフレンズ。皆からはジョンと呼ばれている者じゃ、改めて二人ともよろしくのう!!」


ニホンスピッツのジョン。それが真っ白い奴の名前と種族だった。

元の動物とは似ても似つかない名前だなんて俺と同じだな。と言おうとしたのだが。


「『ジョン』…………?」


気味の悪いことに俺の口は別の事を口走っていた。


「うむ、ジョンじゃ!! さっそく覚えてくれ……………む?」


何故だかはわからない。

俺の記憶にも、俺じゃない俺の夢にも出てこなかった音の羅列のはずなのに、

何故か胸の中が熱くなって、こみあげてくるものが止まらない。


「娘…………お主、泣いておるのか?」


だというのに。涙が溢れ出ていくのにも関わらず、俺の感情は静かなままで。

まるで俺じゃない誰かが俺の体で泣いているようだった。


「どうしたんですか、レオさん!?」


視界が曇る。ぼやけた二人がこちらを心配しているのが耳に入るけど、それもどこか遠い。夢の中にいるかのように自分のことなのに他人事のように感じてしまう。


「いづっ!?」


突然、まるで大木の幹でガツンと殴られたような、気を失うほどの衝撃が頭を襲った。前触れもなく始まった頭痛が加速していくにつれ、曇った視界にノイズが走っていく―――――――――








――――――――――ザザッ―――――――ザザ―――――――――――――――








引いていく頭痛と共にノイズが晴れると、

俺はさっきいたゆうえんちとは全く別の場所にいた。



(…………ここは!? アードは、ジョンは!?)



慌ててアードとジョンを探すが、どこにもいない。

代わりに分かったのは、ここが草原の中に積み重ねられた石がずらっと並べられた知らない場所だということ。そして。


(あれは、ヒト…………!?)


その場所の一角に2本足で立つけものの耳も尻尾も持たない者、ヒトの姿があったことだった。それも1人2人ではなく10人程度の小さな群れで集まっている。


「これで良かったのね…………」

「ああ、暮らした場所ではないが、同じ仲間といられたほうがいいだろう…………」

「グスッ…………」

「お別れだね…………」


大きさやガタイ、性別などばらばらだが、皆、黒い服に身を包み何やら陰鬱な顔をしている。小さい奴の中には泣いているやつもいる始末で、群れ全体にに悲しげなムードが漂っている。


「…………?」

「なんだ……?」


だが、次の瞬間。その悲しげな雰囲気を断ち切るように、空から降り注いだ虹色の粒子が積み重ねられた石に降り注いだ。

そして、辺り一面がまばゆい輝きで満たされ――――


「ふわぁー、よく寝たのう……ん? 主殿に若にお嬢までそろって何をしておるんじゃ?」


その輝きの中から、先ほど見たばかりの真っ白い毛並みのフレンズ、ジョンが現れた。何もなかったはずの場所からこつ然と。何の脈絡もなく。


「嘘…………」

「ありえない…………こんなことが…………」

「これがサンドスター、これがフレンズ化現象か…………!?」


その光景にヒト達は驚きをあらわにする。眼前で起こったことに理解が追いつかないようだが、当然だろう。いろんな奴の夢を見てきた俺でも、こんなものは知らない。


だが、それと同じくらい不可解なものが俺の視界に入り込んできた。

それはまだ小さなヒトのオス。ふらふらとジョンに近づいている様子が目に入ったのだが、何故かその体―――というかその周辺の空間にひどくノイズが走っていた。そして、ノイズまみれのそいつはジョンの前で立ち止まり、叫んだ。


「死―――ったジョンが―――った―――!?」


どこかで聞いたことのある声が辺りにこだました。

それと同時に収まっていた頭痛が再発する。


(………いづっ!! くそ、またかっ!!)


頭痛をこらえながらも耳をすまして音をひろおうとするが、やはりその声にもひどくノイズが走っており、うまく聞き取れない。


「へ? ―――坊ちゃん何言って、あれ儂確か……ってぬおおおぉぉっっ!?!?

な、なんじゃこりゃぁー!?!?」


だが、その叫びをかき消すようにその3倍はけたたましい声が辺りに響き渡る。

先ほど自己紹介をした時と全く同質の声音。やはりこいつはジョンで間違いない。

そして、そのジョンの叫び声を皮切りに、てんやわんやの大騒ぎが始まった。


「あ、主殿ぉー!! 詳しくご説明をお願いしますのじゃぁぁぁぁ!?!?」

「ワシが聞きたいわぁ!!」

「おじ――ん、まずは電――!」

「お、おお、そうじゃ、まずは連絡じゃ。―――はお利口さんじゃの〜」

「了解だ、親父。俺が―――連絡する―――」


指示を飛ばす者、何かを耳に当てそれに向かって話す者、腰を抜かしてへたり込む者。反応は様々だ。そして、原因であるジョンはというと、一番老いたヒトのオスに縋りつき説明を請うていた。驚きと混乱に翻弄されてはいるものの、先ほどまでの物悲しげなムードはどこかに吹き飛び、皆どこか嬉しそうだ。


しかし、その喧噪にノイズが走り始める。いや、声だけではない。

周りを見渡すと、もはや空間そのものにノイズが走り始めていた。


「わからない―――かりだけど、喜ぶべ―――なのでしょうね…………」

「そうで―――………だってあの子は、私達の家族な―――から――――」


ノイズがひどくなる。世界はモノクロになり、それに伴って誰が誰なのかも思い出せなくなってくる。だが、動揺はしない。むしろ、安心したと言ってもいい。

俺が見続けた夢の終わりは皆、大体こんな感じだった。

だから、唐突に始まったこれも夢なのだろう。

俺の夢でも俺じゃない俺の夢でもない、知らない誰かの夢。いや、



ジョンがトリガーになって出てきた、俺の体の中にいる何者かの記憶だ。








――――――――――ザザッ―――――――ザザ―――――――――――――――










「はぁっ………! はあっ……!!」


ノイズだらけの世界は消え、気が付けば、俺は地面に手をつけた倒れこむ間際の体勢になっていた。心臓の鼓動はやけに響き、息切れが激しくて動悸がする。


「レオさん!? 大丈夫ですか!? しっかりしてください!!」

「お主、一体どうした!?」

「分からない…………ただ、夢を見ていたような、いや…………」


すさまじい頭痛がした後、何か大切なものを見た気がする。

しかし、その内容は忘れてしまった。ジョンに怒られる前、空腹をこらえながらアードと一緒に施設から出てきた時と同じで頭の中に靄がかかったようなそんな感じだ。

でも、一つ確信めいたものがあった。


「誰かの記憶を見ていた。そんな気がする」

「誰かの記憶……ですか?」

「ああ、気味の悪い話だけどな。…………嫌だな、俺が俺じゃないみたいだ」


既に俺の中の記憶の大半は俺じゃない俺の記憶で埋まってて、俺の記憶はちょこっとしかないのに、さらにそこに見知らぬ誰かの記憶が入ってきている状態だ。しかも、時折俺の意識とは無関係に体が勝手に動く。


「俺のものじゃない記憶がいっぱいあって、俺は本当に俺なんだろうか…………」


知識も記憶も誰かの物だらけで、もしかしたらこの思考も誰かの物で、俺なんか初めからいないんじゃないか? そんな考えがさっきから頭をよぎって離れなくて、不安になる。


「なあ、こんな感じの…………例えば、たまに意識の飛ぶフレンズって誰かいるのか? それとも俺がおかしいだけなのか…………?」

「私は、レオさんがおかしいとは思いませんよ……? それに自分の記憶が少ないのなら、今から増やしていけばいいと私は思いますけど…………」


これから増やしていけばいい…………か。確かにそうだ。アードの言葉は正しいのだろう。しかし、だからと言ってこの現象がなくなるとは言えないんじゃないか?

この短い間に2度も起こってるんだぞこれ。


「そうじゃな、じゃから、あまり気にせんでもいいと思うぞ。ま、どうしても気になるんなら”としょかん”に行くことじゃ。このパークの長が何か教えてくれるかもしれん」


としょかん…………? 図書館がここにもあるのか? しかし、俺に起こってるこの現象は俺に蓄積されている俺じゃない俺の記憶を照らしあわせても前例がない。図書館ぐらいじゃあ調べても分かるとは思えないが……


「それにじゃ、お主と同じライオン種のトランスバールライオンのフレンズなんかは、なんらかの状態に陥ると人格が変わってその間の記憶が飛ぶらしいからの」


そんな俺の不安をジョンが一刀両断する。どうやら、俺みたいなフレンズも他にいたらしい。えー、なんだよそれ。なんかめっちゃ悩んだの馬鹿みたいじゃないか。


「俺みたいなの他にいたのか…………」

「レアケースじゃけどな。じゃから自分がおかしいなどと気に病む必要はないぞ。むしろ『俺はこういうフレンズだ!!』くらいの自信を持たんかい」


そうだな、あまり気にしても仕方ないか。

まだ、この姿で目覚めたのがついさっきだし、おかしいと決めつけるのは早すぎるよな。


「あ、そうじゃ、ジャパリまんあるが食うか?」

「マジで!? 食う!!」

「ふふふっ」


ハッ・・・・・・!! 唐突にジョンが風呂敷から取り出したジャパリまんにつられて、つい衝動的に!!


「まーあれじゃ、うだうだ悩んで苦しむ位なら、飯くってとっとと寝ろってことじゃな」

「ふふふ……その方がレオさんらしいですね」

「えー、なんだよその扱い。」


うぐぐ、さっきまで真剣に悩んでたのに、こんな反応じゃただの食い意地貼ったはらぺこ野郎じゃないか…………いや、それが"俺らしさ"なのか…………?

なんだろう、俺らしいと言ってもらえるのは嬉しいんだけど、もっとこう、ましならしさが良かったな・・・・・・まあ、それはそれとしてジャパリまんは貰うけど。


「まあ、いいや。ありがたく貰うよジョン」

「うむ! きちんと味わって食うのじゃぞ!!」

「はーい。んじゃ、いただきます」


早速、計四つめとなるジャパりまんを食べる。一噛みすると口に広がったのはほのかな甘味を感じられる生地とつぶつぶのあんこのしっとりとした甘味。あ、これあんまん味だ、やっぱりうまいな。


「そういえば、アードよ。お主、さばんなちほーから来たと言っておったが、何しにここへ来たんじゃ? ここはセルリアンが多いし、他のちほーと比べて異質じゃし、来るフレンズは少ないんじゃが」

「は、はい、それはですね。この前までお借りしていた巣が、というよりさばんなちほー全体が雨のせいで住み心地が悪くなっちゃいまして……せっかくだからこっちにも足を延ばしてみようかなと思ってきたんです。」

「なるほど、あそこの雨季は過ごしやすいとは言い難いしのう」

「あー、わかるわそれ。モグモグ」


ジャパりまん食ってる俺を尻目にアードの方へと話題が移る。

どうやら、今のサバンナは雨季らしい。

こうなる前はサバンナで過ごしていたからわかるのだが、あそこの雨季は厄介なものだ。

まず、雨が降ることでそこかしこに水場ができるため、川や湖などに集まる獲物がやってこなくなる。そして、雨で匂いが消える。さらには足場が悪くなり体力の消耗が激しくなる。その結果、獲物との遭遇機会が減って飢えに陥りやすくなるのだ。まあ、ここはボスがジャパリまんを配ってくれるのでそんな心配はせずとも良さそうなのだが。つくづくありがたい存在である。


「雨風しのげるところも多いので、匂いと地面が変なのを我慢すればなかなかいい巣になりそうだなーって思ってたんですが……」

「しかし、その結果セルリアンに襲われては本末転倒……つくづく災難じゃなお主」

「俺がいなかったらどうなってたことか……」

「あはは……そうですね、あの時はどうもありがとうございます」

「あ、いや、そんなに気にしないでくれ。あの時は腹が減っててアイツ食えると思ってたのもあったから。あ、ごちそうさま」


格好は違えども自分と似たやつが怪物に喰われるのを見せられるのは流石に目覚めが悪い。……いや、悪くなったというべきか。

前なら生き残るために囮にするなりなんなりして見殺しにしていたはずなのだが、あの時はほぼ条件反射で体が動いていた。

やはり、常識や思考回路が根本から置き換わっている。

しかし、体が勝手に動くのは不気味に思えるのに、不思議とそれを不気味だとは思えなかった。この違いは一体何なのか。また、わからないことが増えたな…………


「そういえば昔、セルリアンにかじりついて喰った剛の者がおったな……」

「やっぱ、食えるのかあれ!?」

「コアである『石』を破壊せずに表面を抉り取ればいけたと聞いておる」

「そんなことをする、フレンズがいたんですか!?」


マジか。喰おうとした俺が言うのもあれだがバカだろそいつ。ジャパリまんあるのにそんなことする必要あったのか?

いや、だけど味は気になるな。


「ちなみにどんな味だったんだ?」

「いや儂もそこまでは知らん。ただ『ジャパリチップスの方がおいしいでーす』と言っておったわ」

「やっぱり不味かったんだな……」


匂いからして危険だとわかるし、下手すると毒になるんじゃないだろうか。

大丈夫だったのかそいつ。いや、そんな感想が吐ける以上、大丈夫だったのだろう。

しかし、ジャパリチップスってなんだ?


「じゃぱりちっぷす……?」


どうやらアードも知らないようだ。

恐らくそいつの言動からして食い物なんだろうが、ボスは配ってない様である。


「そやつの大好物の食べ物じゃよ。ジャパリまんとは違って、サクサクとした食感と程よい塩味が癖になるスナック菓子というやつじゃ」

「へえ、一度食ってみたいなそれ。どこに行けばあるか知ってるか?」

「すまぬがそこまでは知らん。少なくともこの遊園地ではもう見かけんのう」

「そうなのか……」

「まあ、そう気を落とすな。配っておらんだけでボス達が作っておるかもしれんぞ? 案外、パークのどこかにあるやもしれんな。」

「あ、あの違いがよくわからないのですが、味の違うジャパリまんみたいなものですか……? それなら食べたことあるかもしれませんが……」

「それとはまた別のものじゃ。袋に入っておって、うすく切られておるから見ればわかると思うぞ」


物知りなジョンが知らないんじゃ、どうしようもない。が、しかしだ。それよりも聞き捨てならないことを聞いたぞ今!!


「え、ジャパリまんってちほーごとに味違うのか?」

「そうじゃったかのう……? 儂はこの『ゆうえんち』から離れんから、ほかのちほーのジャパリまんまでは食った事がないし、よくわからんのじゃが」

「は、はい。さばんなちほーのジャパリまんとは味が違ったので、おそらく……そういえばじゃんぐるちほーのもさばんなちほーのジャパリまんと違った気が」


なんと、あんなに美味しいものが他にもたくさん種類があるらしい。

気になる。とても気になるなぁ。絶対おいしいだろうなぁ…………よし、決めた!!


「よし、旅に出るぞ!! とりあえずとしょかんまで!!」

「よだれがたれておるぞレオ。あれだけ食ったのによくもまあ…………」

「しょうがないだろ、うまいもんはうまいし。腹が空こうが膨れようがそれはそれ、これはこれ。うまいもんを食いたいと思うのは当然の事だろ?」

「調子のいいやつじゃなお主・・・・・・」


あれは味の暴力だった。一口ごとに微妙に味の変わる万華鏡のような味の彩。あれを食ってしまった以上、もうただの肉では満足できなくなってしまったと胸を張って言い張れる。それにさっきのジャパリチップスなるものも気になるし。なにより、俺に起きる謎の現象をとしょかんにいるパークの長とやらに聞きに行けるし、一石二鳥、いや一石三鳥なのでは?


「そこで、さっきのちずの出番というわけですね!!」

「お、おお、そうだな」


アードが手に持っていたバックからごそごそと一枚の紙を取り出した。ああ、あの倉庫で見たやつか。どうやら記憶が飛んでるときに俺がバックに積めていたようだ。


「地図の使い方を知っておるのか? お主ら」

「はい、あそこから出てくるときにレオさんに教えてもらいまして……………『知らない場所に行っても迷わないですむもの』だと」

「レオがか?」

「あー、うん。そんなこと言った気がする。多分」

「ふむ……いや、しかし……………」


俺とアードの発言にジョンはまたもや、戸惑いを隠せない表情で急に独り言をつぶやきだした。下を向いているせいかさっきの時よりか深刻そうな表情をしているように見える。と、思っていたら、ジョンは何かに気がついたようにハッと顔を上げた。


「…………ああ、そうじゃ。そうじゃったな。ならそれもあり得ん話ではないか。まぁ、認めたくない話ではあるがの…………」

「あの、どういうことですか?」

「やはり、レオは旅に出るべきだと再確認しただけじゃ」

「なんでそこでバーバリライオンなんだ?」

「すまぬ、今の儂には答えられん……………」

「そこをなんとか」

「無理じゃ」

「……………わかったよ」


ううむ、ジョンが俺の何に気づいたのか気になる。気になるが、ジョンが話したがらない以上、聞くのもあれだな。でも、釘は指しておくか。結構大事なことだと思うし。


「でも、いつか聞かせてくれよ? 俺に関わることだろ、それ」

「うむ、いつか然るべき時に話すと、この名に誓って約束するのじゃ!!」


これでよし。ジョンのことだから、必ず約束を守ってくれるだろう。


「そういえば、アードはこの後どうするんだ?」

「え、あ、で、できればレオさんの旅にご一緒させていただこうかな………と」

「え、マジで!! ありがとう、助かるよ!!」

「きゃっ……! レ、レオさぁん…………!? きゅ、急に抱きついたら…………」

「あ、ああ、びっくりさせちゃったか。ごめんごめん」


何気なしに聞いてみたら、アードからめっちゃ嬉しい返事が。地図あるし、セルリアンが来ても倒す自信はあるけど、やっぱり一人で行くと考えると心細かったんだよな。後、寝床とかの問題あるし、さっき『巣を借りてた』って言ってたアードがいれば助かるなーと思ってた矢先にこの返事である。そりゃ抱きつきの1つや2つもするさ。


「はっはっは、いい道連れができてよかったのう。お主ら、割といいコンビじゃと儂は思うぞ?」

「お、そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ、これからよろしくなアード!!」

「……ぁ……ふぇ!? あ、は、はい、よろしくお願いします!! レオさん!!」


俺の差し出した手を、やや遅れてアードが両手でがっちりとつかむ。そうして、ここにバーバリライオンのフレンズとアードウルフのフレンズの新しいコンビが誕生したのである。


「それじゃあ、ゆうえんちの出口まで案内してやろうかのう、二人共ついてくるのじゃ!!」

「おー!!」

「お、おー!」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――






――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「さ、ついたぞ。ここがゆうえんちの出口じゃ」


そんなこんなで、俺とアードはジョンに連れられてゆうえんちの出口に来ていた。

ここに来るまでの間にヒトが造ったと思われるもの―――”アスレチック”とか”スワンボート”とか、よくわからないもの―――がたくさんあってそれらに目移りしていた結果、施設から出てきた時は高く昇っていた太陽も今では落ちかけている。


「ここまでありがとな、ジョン」

「き、今日は色々とありがとうございました!!」


これから暗くなるし、ゆうえんちのどこかに泊まっていこうかと思ったのだが、ここはセルリアンがほかのちほーに比べて多く現れるため、寝床にも難儀するらしい。まあ、アードがそれで一度襲われているため、特に疑問もなく、陽が暮れる前に早々にゆうえんちから出発することになったのだ。


「うむ!! セルリアンには気を付けるんじゃぞ、二人とも!!」

「ああ、任せとけ!!」

「はい! ジョンさんもお気を付けて!!」


ゲートから手を振ってこちらを見送るジョンにこっちも手を振り返す。だんだん遠くなっていくジョンの姿に一抹の寂しさを覚えるが、俺たちの歩みは止まらない。

前を向いて、俺とアードは目の前に広がる森に向けて第一歩を踏み出した。














―――――さあ、踏み出そう。新たな旅路へと

―――――描き出そう、終わってしまった物語の続きを

―――――これは、蘇る獅子最強の獅子のための物語だ

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