第399話 一番大事な勇気
「しょうが無いのだ。天気には勝てないのだ」
「キャンセル料も結構高いしね。しょうがないか」
皆で頷き合ったところで、川俣先輩がパチパチパチパチと拍手した。
「正解だな。アウトドア活動で実は一番大事なのは『引き返す勇気、やめる勇気』だって言われているんだ。それが出来るようになればもう安心して任せられるな」
「そうですね」
先生も頷く。
「天気図の読み方も予想も、そして判断も良く出来たと思います。
どうしても出かけたいと思う気持ちもわかりますけれど、アウトドア活動は自然が相手です。だからどうにもならない事もあります。その時に行きたいという気持ちを堪えて撤退する事を判断出来る。もう新しく1年生が入ってきても大丈夫でしょう」
そう、自然が相手だけに予定通り行かない事もある。
今までは結構天候等にめぐまれていたけれどさ。
「さて、仕方無いから新入生歓迎の準備をするのだ」
「そうだね」
そんな訳で気分を切り替えてそっちの計画を考える。
去年までは新人歓迎キャンプは先生の自宅を使っていた。
ただ先生の自宅はちょっと遠い。
それに新人が3人以上入ってきたら先生の車に乗れなくなる。
本格的な合宿等の時は学校のマイクロバスを借りればいい。
でも新人歓迎の時までマイクロバスを借りて先生に運転して貰うのも申し訳無い。
だから今度の新人歓迎の場所は前にキャンプに行った青少年自然の家にした。
あそこなら歩いて行き帰りが出来るし距離もちょうどいい。
テント泊初心者にちょうどいい感じで施設が整っている。
装備表も地図も計画書も作って、案内パンフも作ってと。
先生に借りる装備もリストを作って管理。
「学校のパンフに載せる原稿ってどのファイルだっけ?」
「オリ資料という名前なのだ」
「Webの装備紹介のところ、載っていない装備の追加をしましょうか」
「お願いするのだ」
こういった文書類はいつの間にか亜里砂さんがメインになっている。
学校内の共有フォルダに入っているのだ誰でも扱えるのだけれども。
イラストを入れたり写真を入れたり、どんどん内容が豊富になってきている。
新入生歓迎だけで無く、僕達が今までの活動を見返すのにもちょうどいい感じだ。
「悠君、暇なら装備の写真を撮るの手伝ってくれませんでしょうか」
美洋さんの声。
「はいはい」
そんな訳で隣の実験室に装備を広げて、写真を撮る作業の手伝いをする。
ちなみに美洋さんがカメラ、未亜さんが照明、僕が並べたり広げたり雑用担当。
「装備の写真があればどうやって使うかイメージも広がりますしね」
そんな事を言いながら作業。
本当は春合宿のサイクリング、行きたかったな。
皆そう思っているんだろうと思う。
だからちょっと忙しめに動いている感じ。
よく言われるけれど、山は逃げない。
今回は山じゃなくてサイクリングだけれども。
だからまた、天候に恵まれた時に行けばいい。
そういう事にしておこう。
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