第394話 自業自得と人は呼ぶ

 約2時間後。

 亜里砂さん宅へ来た時と異なり、皆さん荷物が重くなってしまった。


 彩香さんと未亜さんは結局ザックも靴もご購入。

 でっかいザックを背負って自転車を走らせている。


 亜里砂さんは見かけは変わらないけれどしっかり靴は購入。

 彩香さんは靴の箱を自転車の荷台にくくりつけている。

 なお女子の皆さんは他に購入した服やアクセサリー等も積載。


 そして僕もまたザックが目一杯状態。

 増えたのは寝袋とマットだけでは無い。

 誘惑に負けてテントまで買ってしまった。

 おかげで自転車を素直に漕ぐには若干背中が重い。


『まさか悠がテントを買ってしまうとは思わなかったのだ』

 亜里砂さんにそう言われる始末。

 当然寝袋も買ってしまったし、マットも買ったし。

 間違いなく亜里砂さんの次に装備が揃っているなあ。

 新しく買った金額だと寝袋カバーが無い分、美洋さん未亜さんと同等かな。


『あとはバーナーと鍋とレインコートなのだ』

 その通りだ、全く。

 この調子だと来年には揃えてしまいそう。

 なお、北鎌倉から鎌倉へ入る道は車が多くて狭いので、大船の方を回っている。

 こっちは車が少なくて走りやすいが、距離はそこそこ。

 そして全体的に登りが多い。


『そんなに彩香との愛の巣がほしかったのか?』

 とんでもない事を亜里砂さんが聞いてくる。


「いや、これを使えば1年5人だけで遊びに行けるだろ」

『どっちのテントをどう使うにしろ、2人と3人に別れるのだ』

「頼むからそういう詮索はよしてくれ」


 自転車同士はちょっと離れている。

 だから本当は少し大きな声を出さないとと会話にはならない。

 ただ亜里砂さんはこっちの思考を読む。

 だからこの程度の距離など関係く好き勝手に話してくる訳だ。

 まあ、確かにさ。

 彩香さんと2人でキャンプとか脳裏に浮かばなかった訳じゃ無い。

 それは事実だけれどさ。


『素直が一番なのだ』

「その件はプリンで解決しただろ」

『プリンで解決させたのは未亜であって私では無いのだ』

 おいおいおい。

 キングススクエアでしっかり高いプリンを買ったくせに。


『あれはあれ、これはこれ』

 厳しいな、全く。


 厳しいと言えばこの自転車漕ぎもそうだ。

 荷物のせいか、若干お尻に違和感を感じ始めた。

 そしてまだ鎌倉市内にも入っていない。

 つまり残りは10キロ異常ある。


『人生楽あれば苦もあるものなのだ』

 はいはい。

 俺は重くなったザックを背負ったまま自転車を漕ぎ続けた。

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