第377話 雪山ハイクの終わりに
「ここの避難小屋は全部土間なんですね」
前に泊まった山小屋は土間の他板の間があったけれどここはちょっと違う。
それぞれ真ん中で繋がっている土間が3部屋。
壁際に座るところとなる幅50センチ位の板の間があって、2部屋の中央にはテーブルがあるという作りだ。
「ここは確か避難小屋ではなくて休憩所という名目なんです。悪天候の場合は避難小屋として使うのでしょうけれど」
「この前のような板の間やストーブがあったりする小屋の方がらしいですよね」
「でもストーブは徐々に無くなっていっているようです。新しい避難小屋はストーブが無くなっていますね」
そんな話をしながら10分蒸らして御飯は完成。
シチューももう温めているだけの状態だ。
「こっちの火は暖房代わりに消さずにおいておきましょう」
ということで、鍋だけバーナーから外す。
それぞれの食器にシチューと御飯を盛り付けて、
「いただきます」
と御飯タイム。
「うん、やっぱり美味しい」
「いつもながらこの御飯のパラパラ加減が絶妙なのだ」
「シチューも温かくて美味しいのです」
そんな感じでいただく。
最後の最後まで食べきった後。
鍋や食器は洗い場が無いのでビニル袋に包んでしまい込んだ。
「さて、名残惜しいけれど帰りますか」
「温泉も待っているのだ」
靴にアイゼンを装着。
ザックを背負って小屋の外へ。
暗い小屋から外へ出ると雪景色の白さを一段と強く感じる。
そして空がとっても青い。
「何か帰るのが勿体ないよね」
「また来ることが出来ますわ。今年中か来年かはわかりませんけれど」
「取り敢えず温泉へ行くのだ」
そんな感じで下山開始。
前方向の景色はなかなかいい。
大山と関東平野、そして右側に江ノ島を含む相模湾が見える。
帰りは歩き出して少しでアイゼンの調子を確かめた以外は林道まで一気に降りた。
「下りは何かあっけなかったね」
「まあそれくらいの距離ですからね。ここでアイゼンは外してしまいましょう」
アイゼンを外してザックへ。
あとは登山道より傾斜が緩い林道をサクサク歩くだけだ。
結局ほぼ1時間で山頂から来るままで来てしまった。
「これくらいで楽しめるならまた来たいね」
「でも他にも楽しい処は色々あるぞ」
「それに木曜くらいまで雪が降って、かつ晴れた週末でないとこの風景になりませんからね。今回は天気に恵まれました」
「なにはともあれ温泉なのだ」
靴を履き替えて下の雨具も脱いで車の荷室に仕舞う。
こういう気軽な雪ハイキングもいいなと思う気持ちと、今度は温泉で何時間待たされるかなという不安をのせて。
先生の運転する車は走り出した。
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