第371話 高級プリン1個の重さ(2)

「ねえ悠、なかなか出てこないけれどどうしたの?」

 彩香さんの声が聞こえてぎくりとする。


「何か疲れているようで中で寝入っているのだ。しばらくそのままにしてやった方がいいのだ」

「そんな感じなのですよ」

 亜里砂さんと未亜さんが2人で誤魔化してくれた。


「ふーん、わかった。でも寒くないかな」

「大丈夫な感じなのですよ」

 2人の誤魔化しが功を奏した様子で彩香さんはそれ以上追及しない。


『ありがとう、今の言い訳』


『いや、私達のせいなのですよ、今のは。

 さて、そういう訳で私も、美洋も、亜里砂も。相手の人格とか考え方を認めた上での初恋だったのですよ』


『初恋は実らない物だと聞いたけれど、何せ読心出来るだけに結果がわかるのが辛いのだ』


『その分がマーラウのプリンになってカウントされたのです』


 理解した。

 何かおこがましいというか何というか良くわからないけれど。


『別に申し訳無いとか思う必要は無いのです』

『私は少しは思ってもいいと思うのだ』

 それでも何となく済まないとは思う。

 どうしようもないのだけれど。


『でもまあ、ここまでぶっちゃけたので取り敢えずはすっきりしたのだ』

『亜里砂もなかなか理不尽だと思うのですよ、この度は』

 未亜さん、今回はため息が多い。

 そのたびに何か申し訳無いような気になる。


『まあ悠にとっては理不尽な事を言っているので、申し訳無いなんて思う必要はないのですよ。こっちが心を勝手に読んで勝手に色々感じているだけなのですから』

『でも腹が立つのでマーラウのプリンなのだ』

『それは基本的に私の台詞なのです』


 でも、何かなあ。


『それにいきなり告白なんてのも不自然だと思うのです。だから今ここで亜里砂や私が話した事は取り敢えずノーカウントでお願いなのです。マーラウのプリンも執行猶予という事にしておくのです』


 告白か。

 彩香さんは僕の事を実際はどう思っているのだろう。

 心を読める2人に聞きたい気もする。

 でもきっとそれはルール違反だ。

 僕が自分で感じて考えて判断するべきだろう。


『それがきっと正しいのです』

 未亜さんが頷いたような気がした。


『さて、ちょっと証拠隠滅のために悠には本当に15分ほど寝て貰うのです。ついでに色々恥ずかしい事も話したので、ちょっとだけ今の会話を忘れて貰うのです』


 そんな未亜さんの台詞と共に僕の意識は落ちていった。

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