第340話 東天狗岳登頂

 朝食のクリームスパゲティを食べて、魔法瓶に甘い紅茶を詰めたら行動開始。

 格好は昨日と同じだけれど、ザックの中身はテント等が無い分軽い。


 更にアイゼンも装着。

 ある程度歩いて緩まないか確認して、それから出発。

 荷物が軽いけれど足下が慣れていないのでちょっと気を使う。

「がにまた、がにまた」

 そう意識しながら一歩一歩慎重に歩く。


 ちょっと歩くと登山道と合流。

 右へ曲がってゆっくり歩く。

 左側が所々見晴らしがいい。


「あっち側の山は何処の山ですか」

「奥秩父の西側の方の山ですね。金峯とか瑞牆とか」

 そんな感じで歩いていく。


 道は少しずつ登り始めている。

 でもきつい感じでは無い。

 むしろ荷物が軽いせいだろうか。

 結構楽な感じだ。


 所々から見えるちょっと遠目の林の木が何か面白い。

 形と言い雪のかぶり方といい。

「クリスマスツリーが林になっている状態だね」

 まさに彩香さんの言うとおりなのだ。


 歩く方向にいかにもという感じで東天狗と西天狗がそびえている。

 でも何か調子のいいまま歩いて。

 道がちょっと広くなった処で休憩。


「どうですか。アイゼンは緩んでいませんか。足の感覚は大丈夫ですか」

 そう言われて、皆それぞれ確認。

 バンドでアイゼンを付けている面々はバンドを更に締め直す。


「何か凄く楽で調子がいいのだ」

 亜里砂さんの感想。

 どうもそう感じているのは僕だけでは無いらしい。


「ここから東天狗まで、ちょっと急登になりますよ。急がなくてもいいから一歩一歩確実に歩きましょう」


 紅茶を皆で回し飲みした後、再スタート。

 確かに急だけれど、今まで経験した事の無い急さではない。

 ただ下が雪なり氷なので、しっかり一歩ずつ注意して歩くけれど。


 稜線に出たせいか風が少し気になってきた。

 強風とまではいかないけれどけっこう吹いている。

 その代わり左右とももう絶景状態だ。


「北アルプスも見えますね」


 右にも左にも遠くに山が見える。

 どっちも雪を被っている。

 登ったら今いるところと同じような感じなのだろうか。


 頂上かと思っていた大きな岩をぐるっと回って越える。

 ようやく本当の東天狗の頂上だ。

 陽が眩しいばかりに輝いている。

 確かにサングラスをしないと目が悪くなると言うのもわかるな。


 山頂の標識の処で記念撮影。

 最初は未亜さんがシャッターを押して、次は先生がシャッターを押して。


「絶景だよな。ここから先の八ヶ岳とか、ここの手前の八ヶ岳とかルートがわかりそうなくらい見える」

 先輩の言う通りだ。

 実際登山者が歩いているのも見えるし、道がわかりそう。


 更に。

「雲海を始めて見たのですよ」

 未亜さんの声。

 太陽の出ている方向の下が雲海になっている。


 そんな風景をしっかり堪能。

 未亜さんはあちこち写真を撮影。

 そしてまた紅茶をいただいた後。


「さて、風が強いから出ますよ」

 名残惜しいけれど東天狗の頂上を後にする。

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