第337話 食事の時間です

 外に出ると急に寒く感じられた。

 やはりテントの中とはだいぶ違う感じだ。


「ついでだからそこの上まで行って見て見ましょうか」

 昼も登ったテント場すぐ横の高台に注意しながら登る。

 既に空の色は夕方だ。


「向こうの山に沈んでいく感じだな」


「あっちは何という山なんだろ」


「中央アルプスの北側部分ですね。あの右側のちょっと高いのが木曽駒ヶ岳だと思います」


 そんな事を言いながら夕焼けを眺める。

 空が夕焼け色から背後の藍色に向かって綺麗なグラデーションを描いている。

 まわりの雪景色と合わせて、まるで何かのセットのようにも見えてしまう。


「なんと言っていいかわからないが、綺麗だよな」

「そうですね」


 まわりは風も無く静かだ。

 そんな中、一段と透き通った感じの空気を通して、シルエットがくっきり見える遠くの山々の間に夕日が沈んでいく。


「寒いから暖房代わりの紅茶」

 熱い紅茶をかわるがわる飲みながら、僕達は夕日が沈んで半月位の月が煌々と照り出すまで、ずっと空を眺めていた。


 ◇◇◇


 テントに戻り、ランタンを付けて、スープ用のお湯を沸かす。


「最近のインスタント食品は便利ですよね。乾燥野菜も入っていますから」

 先生の言葉通り、コーンの他ほうれん草と人参が入っているようだ。


「さて、おこわももういいでしょう」

 先生が鍋の蓋を開けて様子を見る。


「ええ、完成ですね。それでは皆さん、食器を集めます」

 大きい食器に炊き込みおこわを、小さい食器にコーンクリームスープの素を入れてお湯を注げば完成だ。


「それでは、いただきます」


「いただきます」


 夕食になる。

 おこわはちょっと固めで、そして具が多い。

 野菜はタマネギとトマトだ。

 タマネギは茶色い炒めきったものと白いのと両方入っている。

 食べるとタマネギの部分が甘くて、お肉が自然な塩味だ。


「先生、これってひょっとして」

 川俣先輩の言葉に先生は頷く。


「ええ。川俣さんがビリヤニを作る時の要領を真似して作ったものです。米は餅米ですし野菜とお肉の自然な味で食べる感じですけれどね」


「この餅米がぱらっとした感じで炊けているのはどうしてなのですか」


「米を入れる時に野菜やお肉の上に置いて、蒸す感じで炊けるようにするんです。それにお肉の脂とかもあるので、こんな感じに仕上がるんですよ」


 御飯自体は固めに仕上げた赤飯に近い感じだ。

 自然な味で美味しい。

 スープと合わせて食べてもいい感じだ。

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