第329話 装備確認とその後

 その後スパッツ、下着と順番に合わせていく。

 更に寝袋、寝袋カバー、マット等も選んで。

 個人用の装備だけで結構ザックが膨れた状態だ。


 更にテントもいつもと違う状態になる。

 雪山以外ではテント本体の外側に雨よけのフライをつける。

 でも今回はフライ無しでテントの内側に内張をつけるそうだ。

「内張が無くて通常のフライを付けた状態で雪山で試したんです。そうしたら夜中に酸欠に近い状態になったしまったんです。明らかに息が苦しくなって仕方なく入口を開けて寒い中換気をしたんですよね。何もなかったから笑い話にできますけれど。

 中の水蒸気がフライで凍ってテント内が換気されなくなったのが原因ですね」


 更に煮炊きをするガスは寒い処用のものでないと火がつかないとの事。


「何か色々普通の時期と違うよね」

「でも注意すべき事がわかっているからこそ、私達でも行けるのですよ」


 未亜さんの視点になるほどなと思う。

 実際にアイゼンを付ける練習とその状態で歩く練習もした。

 がに股で歩くことを意識しないとアイゼンが引っかかって転んだりもするそうだ。

 そんな訳で格好だけはそれなりに出来た。


「さて、あとは買い物に行きましょうか。服なども見るなら一緒にどうぞ」


 僕は気づく。

 これは不味い展開だ。


「僕はいいです。装備も一通り揃ったし。何ならバスでここから帰ります」


「えーっ、悠君、一緒に行かないの?」


 彩香さんのこれに弱いのは自分でも自覚がある。

 でも前例があるのでここは断固として断ろうと思ったけれども。


「大型のスポーツ用品店にも寄るからさ。どんな装備を売っているか見るだけでもいいんじゃないか」

 川俣先輩にそう言われ。


「この後の予定は無いと読めるのだ」

 亜里砂さんにはそうバラされ。


「折角だから皆で一緒に見て回りましょう」

 美洋さんにもそう言われてしまう状況だ。


 更にこそっと未亜さんが告げる。

「人生諦めが肝心なのですよ」

 おい!未亜さん。


 まあそんな訳で僕も諦めた。

「基本的にアウトドア用品の処にいるよ。皆が服を見ている間はさ」

 そう言って僕も仕方なく車に乗り込んだ。


 それでも当然ながら女性陣の服選びにも付き合わされてしまうわけで。

 結局寮に帰ることが出来たのは夕方7時近くだった。

 うん、これからは断固として断る勇気を持とう。

 そう決意はするものの。


「色々見られて楽しかったね」

 なんて笑顔の彩香さんを見るとその決意も鈍るわけで。


「まあ頑張るのだ」

 なんて亜里砂さんに励まされて今日の一日が終わりを付ける。

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