第325話 反則級の大物

「春の頃に比べると大分皆歩くの慣れたな。ここまで今日は休憩無しで来たし」

「あの塔ノ岳で大分鍛えられましたね」

「あのハードルのような木の階段は酷かったのだ」


 そんな事を話しながら日当たりの良く景色もいい広場の端をキープ。

 レジャーシートを2枚敷く。

 ザックを置いて、さて本日の山場、各自の料理の披露だ。


「まずは私だな。いつものチキンビリヤニ、ライタだと今日は寒いので温かいヨーグルトスープ」

 先輩のメニューは半分予想通りで半分外れ。

 お櫃のような大きさの巨大タッパーに入ったビリヤニ。

 あとは僕のザックから出てきた巨大魔法瓶。

「温かいスープというのは以外でした」

「今は気温が寒いからさ。あとスープは温かいうちに飲みたいから最後に入れるよ」


 という事で次は……

「なら僕が出すか。イカの塩辛、自作だからそんなに塩辛くないけれど」

 イカの身が多くて塩辛というより内臓和えという感じになったタッパーを出す。

「あとはおまけのいかげそ、マヨネーズとワサビを混ぜたので和えてある」


「悠は将来酒飲みになりそうだな。でも美味そうだ」

 確かに飲み屋っぽい感じかな。

 言われてみるとそんな気もする。


「私のはサラダです。ポテトサラダにシェルマカロニが入っている感じ」

 彩香さんのはサラダだ。

 基本はポテトサラダで、マカロニの他細く切った人参とか色々野菜が入っている。

 見栄えもいいし美味しそうだ。

「確かにサラダは絶対欲しくなるよな。見栄えもいいし美味しそうだ」


 次は美洋さん。

「私は煮物です。良く里で母が作ってくれたのを真似して作ってみました」

 里芋、鶏肉、人参、こんにゃく、ゴボウ、厚揚げが入ったいかにもという煮物。

「これは美味しそうなのだ」

「切り方とかも含めて丁寧な家庭料理って感じでいいな、これも」


 未亜さんのは四角いタッパーにぎっちり茶色い手羽先が詰まっている。

「私はジャンクに手羽先のコーラ煮なのですよ。ガンガンに煮詰めたおつまみ仕様なのです」

 茶色くてつややかでいかにも美味しそうだ。

「こういうのもいいよな、いかにもって感じで」


 そして亜里砂さんがにやにやしながらザックから何かを取り出す。

 新聞紙で包んだ何かをおいて、更に木製の怪しげな台をセット。

 新聞紙をほどくと、中は巨大な肉だった。


「うわあ、肉だね」

 彩香さんが当たり前の事を言ってしまうほど、肉だ。

 形は手羽先に似ているが、大きさはニワトリ1羽より3回り以上大きい。

 これはあの台を含め、間違いなく……


「本当は私の名前にちなんでハモンセラーノを用意したかったのだ。でも父の助言と予算の都合でパレタセラーノになったのだ」


「豪快なもの持ち込むなあ」

 さしもの川俣先輩も呆れている。


「このお肉って、何なのでしょうか」

「いわゆる生ハムの原木なのですよ。豚の脚1本まるごとハムにした、豪華というか豪勢というか何というか……」

「うちの父言うには、前脚部分だからそんなに高くないそうだのだ。現地で買って送って貰ったのだ。毎日オリーブ油を塗って馴染ませて、何時出そうか機会を伺っていたのだ」

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