第324話 冬なら何でも持ち込めます

 そんな訳で自家製の塩辛とげそのワサビマヨネーズ和えをタッパーに入れて、念の為タオルで何重にも巻いてザックに入れる。

 あとは自分用の食器と箸とスプーンを入れ、水とか雨具とかを入れればOKだ。


 ちなみに雨具や食器は先生から借りっぱなしのもの。

 何せ雨具は先生お勧めクラスだとは2万円近くするのでなかなか手が出ない。

『軽い雪山でも使うことを考えると、最低でもゴアの3レイヤーあたりのものが欲しいですね』との事で調べた結果だ。


 食器はまあ、そのうち安いのがあったら買うかもしれないけれど。

 ちなみに今借りて使っているのはアルミ製の四角い2個入りのもの。

 ザックに入れやすいので便利だ。


 さて、寮の事務室前にはもう彩香さん、美洋さん、未亜さんと3人来ていた。

 亜里砂さんと川俣先輩はまだのようだ。


「今朝も女子寮がインド汚染されたので、例の物を作ったとは思うのですよ」

 未亜さん情報によると、先輩はやっぱりビリヤニを作った模様。


「何を作ったかは当然、現場まで秘密だよ」

 彩香さんがそんな事を言う。


「そうだね。その方が楽しいし」

 そこに何やら変形したザックを背負った亜里砂さんが登場した。


「今日もメンテナンスしてお肌つやつや状態で持ち込んだのだ!」

「メンテナンスって、確かに亜里砂さんは色白だけれどさ」

「ふふふふふ、私では無く食材なのだ」

 何だろう。


「それにそのザック、始めて見るけれど買ったの?」

 それなりにやれているので新品ではないと思う。

 でもきっと、背負うところのシステムを見てもかなりいいザックだ。


「父のお下がりなのだ。50リットルサイズとなかなか大きいのだ。今日の荷物は非常に重いけれど、おかげで何とか背負えるのだ」

 確かに、絶対中に大物を入れている。

 ザックの形が変だ。


 そして先輩も登場。

 先輩はいつもの大きめディパックにぎっしりという感じだ。

 更に手提げも持っている。


「毎回だけれども悠、これを持って行ってくれ。私のザックでは色々限界だ」

「わかりました」

 という事で先輩の荷物、多分ヨーグルトと野菜を僕のザックに追加。

 そして学校前の林道へと歩き始める。


「この持込パーティ、どの季節でも出来ない事は無いけれどさ。やるならやっぱり冬だよな。ナマモノも持ち込めるからさ、外が寒いおかげで」

 なるほど、確かにそうだな。

 僕のメニューなんて夏だと傷みそうだし。


「この川も悪くないですけれど。この前の丹沢の滝のあったところ、あそこの渓谷の水、凄く綺麗でしたね」

 美洋さんが川を見て、この前の山小屋山行を思い出したようだ。


「あれはまた行きたいな。出来ればまた山小屋泊まりでさ」

「でも平日で無いとああやって山小屋を占拠できないかな」

「もうすぐ雪も降るしさ。そうすると必要装備も変わるぞ」

 そんな事を言いながら川沿いの林道を歩いて行く。


 いくつか山に行った後では、ここの林道が平坦で歩きやすいのが良くわかる。

 それに丹沢ほどでは無いが、この川もなかなかいい感じだ。

 あの渓谷の豪快な水しぶきや水量と比べると遙かに小さくて水量も少ない。

 でもこれはこれで静かな良さがある。


 そんな感じで林道終点まで歩き、その後川沿いから一気にトラロープ付きの急斜面を登って、ちょっと歩いて。

 ほぼ1時間で双子山の広い山頂に到着した。

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