第317話 修学旅行等のお約束?

「熊が出ますなんて張り紙があるのだ」

 亜里砂さんがそんなものを発見。

 皆でぞろぞろ見に行く。


『熊危険!入山の際は下記のなかから1点以上、持参することを強くお勧めします。

鈴・ホイッスル・ラジオ・MD・MPプレイヤー……』

 更にその注意書きの下にはピストルがある。

 本物かと思って焦ったらエアガンだ。

 BB弾も予備が置いてある。


「でもこんな玩具じゃ役に立たないですよね」


「うちの場合は必要ないだろ」

 先輩がそう言ってにやりと笑う。


「彩香か亜里砂、未亜辺りが魔法とか術とかで仕留めて仕舞いそうだしな」

 確かに。


 そして。

「ストーブ、火がつきましたよ」

 という事で皆でストーブの周りに集合。

 

「ああ、確かにこれいいですね。何か物語の世界みたいです」

 美洋さんがいかにも嬉しそうだ。

 歩いていないと基本的に寒い。

 でもストーブの炎がガンガンに服を通して温かさを伝えてくる。


「悪い、本能的に失礼させて貰う」

 先輩はストーブの回りを囲む椅子の一方を占拠して横になった。

 バッテリー切れというか、昼寝の時間だ。

 何かいいな、こんな雰囲気。

 まるで別荘みたいだ。


「そう言えばこの避難小屋って自由に使っていいんですか」

 ちょっと気になったので聞いてみる。


「本当は天候不順とか予定より遅くなったとか体調が悪いとかで避難するための小屋なんですけれどね。だから奥多摩等は色々いい避難小屋がありますが、原則的には非常時以外は使ってはいけない事になっています。

 まあそれでも計画的に使う人はいますけれどね。


 丹沢はテントを張れる場所が無いのでそこまで厳しい事は言わないですね。でもここも誰か来たら、寝る場所とかは開ける必要があります。まあ平日ですから多分人は来ないと思いますけれど」


 つまりある程度自由に使える訳か。

 いいな、これ。

 この雰囲気、何か癒やされる。


「一息ついたら荷物整理をして、回りを少し見て回ってから夕食を作りましょう」


「私は散歩はパス。昼寝最高」

 お昼寝中の先輩からそういう返事が返ってくる。


「何かこういう感じのお家を建てて、こんな感じにストーブ囲むのもいいな」

 彩香さんがそんな事を言っている。

 実際には難しいだろうけれど、雰囲気としてはわかるな。


「疲れて程良く温かくなったので、私も眠くなったのだ」

 亜里砂さんも横になってしまう。


「よし、この隙に亜里砂の額にマジックで『肉』と書くのです」

「いつの時代のネタだよ」

 思わず未亜さんの古いネタに反応してしまった。

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