第286話 キャンプ場の朝

 そんな亜里砂さん無双から開けた朝。

 朝食は先生が挽肉とタマネギを炒めるところから始まる。

 深くて大きいフライパンでその2つを炒めて。


「今日の朝食は何の予定ですか」

「炊き込み御飯とスープですね」


 先生はタマネギの色が変わったところで、トマト缶、鶏肉、米、水とを投入する。


「フライパンで炊くんですか」

「この方が思い通りに炊けるんですよ。ガラス蓋で中身が見えますしね」


 なお、他の面々はまだ起きてきていない。

 川俣先輩は基本何も無ければ寝ているタイプ。

 他の皆さんは亜里砂さんの攻撃が夜半まで続いた影響だ。


 あれは酷かった。

 基本的には僕がターゲット。

 でも自分以外の3人も容赦無く攻める。


「美洋さんはそう言えば男子は苦手という設定なのに、悠だけは平気なのかにゃ」


「でも彩香の悠にくっつき具合は一番なのにゃ。必ず自分と悠とが一緒に動くように考えているのにゃ」


 こんな感じでひたすら攻撃を繰り返し。

 なまじ全て事実から拾っているだけに洒落にならない。

 そんな訳で深夜まで話してどっと疲れて。

 今朝もまだ皆さん起きてこない訳だ。


 ただ、僕は基本的に目覚めがいい体質。

 なおかつ起きたら朝の寒さのせいか亜里砂さんと彩香さんに密着されている状況。

 もちろん寝袋越しなのだけれど、2人とも完全に僕の寝袋に乗っかっているというかくっついているというか。

 思い切り身体の重さとか体温とか感じそうな状態で。

 これはたまらんと逃げてきた訳だ。


 ただ、ここの朝の空気は最高。

 ちょっと涼しいというか寒いけれど、綺麗に澄み渡っている。

 富士山も他の山々も綺麗に見えているし。

 早起きして良かったなと思う。


 ふと、紅茶のいい香りがした。

 先生が湧かしていたお湯で紅茶を煎れたらしい。


「紅茶の色が出るまで、もう少し待って下さいね」

 うん。こんな朝も贅沢でいいな。


「やっぱりこの季節のキャンプ、いいですね」


「シーズン的には一番いいんですけれどね。ただこの時期はイベントも多くて色々忙しいんですよね。業者テストに文化祭に、その辺りが一通り終わるともう冬の入口ですから。

 ただ11月から12月頭も同じくらいキャンプにはいい季節ですよ。寒いですけれどその分空気は澄んで綺麗ですしね。個人的には北岳の肩の小屋のテント指定地みたいに、高度が高くて見晴らしがいいところのテント泊が好きなんですけれどね」


 北岳か。

 聞いたことはある。

 日本で2番目に高い山だ。


「北岳ってどれ位大変なんですか」


「1泊2日あれば大丈夫なんですけれどね。今年は無人島でしっかり楽しみましたから、夏休みの活動はそこまでにしたんです。それにバス代や駐車場代、往復の交通費も結構かかりますしね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る