第285話 テントの中で怪しい夜話(2)

「勿論真っ当な男子も、美洋を狙っているけれど行動に問題が無い男子もいるのだ。

 だからまあ、具体的な名前は出さないでやるのだ」


「でもそれでは悠さんに迷惑がかかります」


「問題無いのだ。悠と美洋が知らないだけで、他は皆さんそれなりに御存知なのだ。草津先生や川俣先輩まで含め、ある程度既知の事実なのだ」


 ここで未亜さんが口を開く。


「前に亜里砂が誰ぞに言った注意が怖かったのです。『私は今ここで君に注意する。その行動は控えろ。もし実施したのなら、私が責任持って君を処分する。私に証拠は必要ない。今私がこの台詞を言う事が何を意味するか、よく考えた方がいい』。口調までいつもと変えて、なかなか決まっていたのです。面白かったので一言一句憶えてしまったのです」


「あれは未亜が気づいている事も知っていたのだ。でも同じクラスの私が注意した方が、いつも見ているぞという意味で怖いと思ったのだ」


 おいおい。

 完全に僕の知らない世界だ。


「未亜は色々言っているから別として、彩香も怒らせると怖いのだ。廊下にたてかけてあった古材を凍らせ粉砕破壊した後。『次はあなたがこうならないよう、よく考えて』というのは洒落にならないのだ」


 うわあ。

 でも彩香さんがそうするという事は、多分ターゲットが僕だったんだろうな。


「何か色々知らなくて、申し訳無い」

「悠が謝る事は無いのだ。未亜を含め、皆好きで手を出しているのだ」


 ここで『未亜を含め』と態々未亜さんを強調したのは何か理由があるのだろうか。

 亜里砂さんはおっとり系に見えるけれど、色々曲者だからな。

 きっと何かしら意味がある事なのだろうと思うけれど。


「さて、前置きが長くなったのだが恋バナなのだ。ちなみに対象は悠。何せ相手の女性はよりどりみどり。本命の彩香なのか対抗馬の美洋か、実は未亜なのか私は身体だけ目当てなのか。今夜はゆっくり追及するのだ」


 おい。

 いきなり僕を攻撃か。


「さっき曲者と思った罰なのだ」

 亜里砂さん、容赦ないな。


「ついでに言うと、実績では何故か未亜が一歩リードなのだ。みんないるのに2人だけでこっそり話したり、挙げ句の果てに褒めまくり攻撃うけたり。2人でいる時間は彩香が一番長いが、未亜の方が色々濃密な時が多いのだ」


 おい、ちょっと待ってくれ。


「あの辺は柾さんの話なり、その前は美洋さんの話なりあった訳で」

「という事は本当なんだ」

 彩香さんがそう言う。


「おい亜里砂、色々誤解を受けるような言い方はやめてくれ」

「火の無い所に水煙、ボヤがあったら森林火災まで。それが私のモットーなのだ」


 危なすぎるわっ!


「未亜、それが本当だったら応援しますけれど」

「あれは単に励まして貰っただけなのですよ」


「ついでにもう少しいてくれと悠に請求するあたりがなかなか可愛いのだ。どうやら悠にはその気持ちが通じなかったようなのが残念なのだ」

 亜里砂さん、容赦無い。

 何せ表面思考を読み取るからな。

 いくらでも攻撃材料は出せる訳で。


「それでこの話題が出た後、咄嗟に彩香さん相手に済まないと思ってしまうと言う事は、やはり本命は彩香にゃのだにゃ」

 さらに変な語尾変化までつけて、亜里砂さん無双が始まる……

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