第264話 人海戦術・強制労働
「まずは第1段階。外側の柔らかい殻を剥きます。剥いたら真ん中の水が入ったバケツに入れて下さい。青い実等で若干かたい場合は、コンクリの部分で足で踏んで中身を出して下さい」
という訳で。
釣り用の椅子を持ってきて皆でくるみ剥きを開始する。
実際にやってみると割と簡単だ。
黒くなっているのは手の力で簡単に剥ける。
黄色のもちょっと力を加えれば大丈夫。
「この外側は綺麗に取った方がいいですか」
「水洗いしますし、どうせ殻も後で割りますから気にしなくていいですよ」
そんな感じでよいしょよいしょと全員で剥いて。
中ぐらいのバケツ5個の中程くらいまでになった。
「次は水洗い。こすりまくって外についた部分を取ります。よく水を流しながらやって下さい。大体取れればいいですよ」
バケツ5個なので1年生5人で作業。
その間に先輩と先生は何やら他の作業をしている。
「洗ったら、南の縁側に新聞を敷いておきましたのでそこで干して置いて下さい。綺麗に干しておかないと長持ちしないので、結構重要な作業ですよ」
ああ、やっと一仕事終わった。
そう思ったら次にとんでもない作業が待っていた。
「さあ、女工哀史の世界へようこそ」
先輩がそんな事を言っておいでおいでしている。
場所はいつもの和室。
南側にくるみを干している縁側がある部屋だ。
「ジュズダマは実は結構美味しい。ドングリと同じで簡単に採取出来て主食にもなる優秀な野草だ。しかし、食べるまでにはなかなか面倒くさい作業が待っている」
ペンチに似た工具が大きさこそ違えど6つ置いてある。
他には短い針金と、小さいボール6個、そしてジュズダマの入ったボール。
「まず各自の前に新聞紙を敷いて、その工具、プライヤーと言うけれどそれを1人1つずつ取ってくれ。あとその針金も1人1本」
そして先輩は今朝採ったジュズダマをほぼ等分して全員の新聞紙の上に置く。
「さて、作業内容を説明しよう。ジュズダマを取る。そしてこのプライヤーでお尻部分をこうやって掴んで軽く力を入れる。次にジュズダマを回転させてもう1度プライヤーに力を入れる。そうするとこんな感じで殻の後半分が取れる」
すぽっとふたのように殻の半分が取れた。
「この状態で、ジュズダマの先っぽ部分から針金で押してやると、ほら、皮に包まれた中身が出てくる。この皮を取った中の茶色い部分をこのボールに入れる。
作業は以上!自分のノルマ達成までトイレと水飲み以外は禁止だ」
あ、女工哀史と言った理由が理解出来た。
「つまりは自分のノルマが終わるまでは強制労働だと言う事ですね」
「採取したものは自分でちゃんと始末しようという事だ」
「面倒くさそうなのだ」
「諦めろ、採ってしまったからには無心にやれ」
そんな訳で。
思わぬ強制労働が幕を開けた。
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