第262話 そして河原でクルミ狙い

 朝7時30分に先生の家を出て約1時間。

 学校付近を通って江ノ島を通ってついたのは体育館のある大きな公園。


「去年と場所が違いますね」

「去年の場所は車の立ち入りが厳しくなったそうなので、新しい場所です。此処の川も大きいですし、植生そのものはほぼ同じですよ」


「こんな所ですか」

「ここの駐車場をお借りして、河川敷に入るんです」


 先生の後をついて堤防を上り下りして河川敷に入る。

 整備されたお花畑を上流の方に歩いて、そして5分程。


「ここからは整備していないので、良く周りを見て歩いて下さいね。色々なものが生えていますから」


 言われたとおり周りを見ながら歩く。

 真っ先に立ち止まったのはやはり川俣先輩だった。


「ストップ。これが小豆だ」

 小さいエンドウ豆のさやの形をした、雑草にしか見えないものを先輩が指さす。


「これに袋を被せて、こうやって種を採る」

 先輩は袋から採った種を見せてくれた。

 確かに形とデザインは小豆だ。

 サイズは米粒くらいだし、色も黒いけれど。


「小さいけれどこれ、普通の小豆より美味いんだぞ。先輩権限で後輩に命令!この付近に生えているのを根こそぎくらいの勢いで集めろ!」


 先輩権限なんて始めて聞いたが、異論は特にない。

 先輩がやったように袋を被せて、そして鞘に手をかける。

 そして事前に袋を被せた理由を理解した。

 この鞘、ちょっとの衝撃で中の豆を弾き飛ばしてしまう。


「なるほど、だから袋を被せて採ったんですね」

「そういうことだ」


 何せ小さいからなかなか量が貯まらない。

 ただこの付近に大量に生えてはいるので、人数任せで採りまくって。

 僕の袋に握りこぶしくらいの種と鞘が貯まったくらいになったところで。


「そろそろ次に行きましょうか。他に採取する人もいるでしょうから」

 先生の言葉で移動。

 皆が次の袋を出して身構えながら歩いている。

 そして次は未亜さんだ。


「この左入ったところにジュズダマが群生しているのですよ」

「当然、採取だよな」


 再び採取活動。

 なかなか前に進まない。

 そしてジュズダマをある程度採ったところで再スタート。

 20メートルも行かないうちに今度は先生が止まる。


「その木をよーく見て下さい。それがオニグルミの木ですね」

 えっ。

 割と冴えない感じのそんなに太くない木だ。

 でもよく見てみると。

 確かに所々に実が10個以上、塊でついている。

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