第258話 ドングリの試食
先輩はガスを強火にして、フライパンでドングリを炒り始めた。
「まずは基本、煎っておく。こうすると殻が剥きやすくなるから。はぜる場合があるから余り近づいて見るなよ」
2分位すると、パチパチ音を出して殻が割れ始めた。
3分位して先輩は火を止めて、新聞紙の上に煎ったドングリを移す。
「これで触れるくらいになったら手で殻を剥く。焦ると火傷するからまあ1分程度時間を見てからやればいい」
「割れていない奴もあるんですけれど」
「それはキッチンハサミを使う」
という事なので、まずは割れている奴から挑戦。
指先にちょっと力を入れると、黒い殻は簡単に割れる。
中からは小さいけれどいかにもナッツですという感じの物が出てきた。
「そんな訳でまずは試食してみてくれ。スダジイとマテバシイ両方とも」
両方を食べてみる。
スダジイの方は割とホクッとした感じ。ちょっと甘さも感じる。塩を軽く振るだけで結構ナッツとしてもいけるかなと言う感じ。
マテバシイの方は大きくて割りやすく食べやすいけれど、味は野生のデンプン。
ナッツっぽい歯触りもあるけれど若干遠くに渋さが見えるような感じだ。
そしてこれだという美味しさのポイントが今一つ見つからない。
「そんな訳で、どっちもある程度加工してやった方が美味しい。特にマテバシイの方。ただマテバシイは味の癖が少ない分、粉にしたりして使うと普通に美味しかったりする。
そんな訳で、夕食まで全員でこれを剥く作業だ。6人でやれば結構出来る。剥いた分はそのまま明日のおやつになると思えば少しは頑張れるだろう」
そんな訳で作業を開始。
「うーん、ちまちました作業なのですよ」
「無心にやれば精神統一できるような気がします」
「剥いた分、量が減ってしまうのが悲しいです」
という感じでそれぞれ作業。
「つまみ食いは有りなのか?」
「その為の塩砂糖バターだ」
「では遠慮なく食べるのだ」
という人もいる。
それでも皆でやれば結構出来るものだ。
30分もやるとカゴ山盛りだったドングリも姿を消して、
丼2個分のナッツになる。
「あれだけ剥いてこの程度ですか」
「そう。でもまあ、水に浸けた後2週間も乾かせばもっと剥きやすくなるからさ。それに慣れれば結構早く出来るし。
それじゃちょっとばかり試食用を」
先輩は剥いたスダジイをフライパンの中に一握り入れ、バターでささっと炒めて砂糖を振りかける。
砂糖が溶けたところで火を止める。
「取り敢えず簡単なおやつ。先生は塩の方が好きらしいけれど、私は甘い方が好きでさ。まあその辺は好みという事で。砂糖が冷えて硬くなったら完成。それぞれ食べてみてくれ」
食べてみると、確かにこれなら立派におやつになる味だ。
甘さとバターの油と塩分、そしてスダジイのホクホク感あるナッツというのがいいバランスになっている。
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