第257話 ドングリの下準備
「お疲れ様。距離が長かったから疲れたでしょう」
「厳しかったのだ。特に最後の家の前の坂が」
確かに着いたと思ったらアレというのは結構きつい。
「でもおかげで見晴らしもいいし、庭にテント張ったりしても回りから見られたりしないで済むんだしさ」
そして先生がプラスチックバケツをいくつか重ねたものとカゴを取り出す。
「さて、ドングリ選別用バケツです。ゴミには使って無いから大丈夫ですよ」
川俣先輩はバケツを外のコンクリート部分に置いて、ホースで水を入れ始めた。
「ではここに、まずはスダジイの実を入れてくれ」
そう言われたので、皆でスダジイを入れた袋を空ける。
入れている途中で。
「ストップ、取り敢えずここまで」
先輩がそう言って、バケツの中をかき回した。
「これで水に浮いてくるドングリはまず駄目。大体が虫食いとか成長不良」
そう言って先輩は浮いてきたドングリをカゴで掬って外に出して。
そして沈んだドングリをそのまま水で洗ってカゴですくい、バケツの中にたまったゴミを出して、まだバケツへ戻して水を入れる。
「この要領で沈んだドングリを集めて洗って水漬けにする。水漬けにするのは虫を殺すため。ドングリの中の虫は美味しいっていう話も聞くけれどさ。残念ながら先生も私も虫食は得意じゃないんだ。偏見だとはわかっているんだけれどさ」
「まあ、必要なければ無理して食べる事もないと思うのですよ」
そんな感じで洗って水を替えてをやって。
「何かバケツが足りなそうなのです」
「水に浸けている奴をまとめて、どれかバケツを空けられないか」
「やってみているけれど、それでも確実に足りなくなりそうなのです」
そんな訳で、100リットルの大型ポリバケツを追加。
「直接ゴミを入れていないので、そんなに汚れていないと思いますよ」
と先生が言ったとおり、洗うまでも無くそこそこ綺麗だったけれど、まあ一応という事で洗って。
そんな訳でスダジイは100リットルの巨大バケツほぼいっぱいに。
マテバシイは25リットルの小さいバケツ2杯に。
それぞれ処理が完了した。
「まだまだ落ちていると思うからさ。機会があったら拾って蓄積しておこう」
「それで、ちょっとは試食もしてみたいのだけれど、出来るのか?」
亜里砂さんがそういう。
「勿論。そんな訳でスダジイもマテバシイもちょっといただいておこう」
先輩はそう言って、両方あわせてカゴ山盛りくらい掬って玄関に入る。
「さて、次は実食の時間だ。先生、フライパンとバーナー貸して下さい」
「どうぞ。砂糖もバターも塩も適当に持っていって下さいね」
「という訳でいつもの部屋で準備だ」
玄関入って右側の、いつも雑魚寝したりする部屋に座卓をセット。
先生言うところの背板を敷いて、上にガスバーナーを載せて。
砂糖、塩、バターも準備完了。
キッチンハサミも用意している。
「それではドングリの試食会、開始だ」
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