第254話 昼食は野遊び部名物のアレです

 ただゆっくりペースのせいだろうか。

 3時間は上り下りして歩いているのに、皆さん一向に疲れた感じはしない。

 まあ10分から20分に1回はドングリ拾いのため小休止しているような状況だけれども。

 おかげで距離は全然稼げないが、収穫は大量。

 各自スーパーの買い物袋1袋位はキープしているのでは無いだろうか。


「さて、この次か次くらいの休憩で飯にするぞ」

 先輩が宣言。

 10分程歩いた先にちょうど広くなっているところがあった。

 そこでザックを下ろし、レジャーシートを広げる。


「さて、メニューは簡単。まずはこれ」

 僕のザックから重そうな巨大タッパーを出し、亜里砂さんへ。


「これをかき混ぜてくれ。大体でいいぞ。ただ各自の食器に一通りのおかずが入る程度には頼むな」


 匂いでわかる。

「ビリヤニですか」


「ああ。毎度お馴染みチキンビリヤニ。そして当然ライタも作る」

 先輩のザックからヨーグルト2パックが出てきた。

 前と同じように香辛料を入れ、塩を振り、ニンニクチューブを入れて混ぜて。


「お、結構銀杏が入っているのだ」

 かき混ぜ担当の亜里砂さんがそんな事を言う。


「あれはこの前の銀杏ですか」

「ああ。美味しそうだから入れてみた。本当はドングリも間に合えば入れてみたかったけれどさ」


 そんな訳で、ヨーグルトとビリヤニを各自の食器によそおえば完成。

 いただきますと一応唱和して、食べ始める。


「うわ、カレー以上に色々な香りが口の中を通るのだ」

「本場のカレーはこんなものさ。ちょい癖があるけれど大丈夫かい」

「文句無く美味しいのだ。そうか、今朝女子寮で早朝匂っていた香りはこれだったのだ」


 また寮の環境汚染をしたらしい。

 先輩が苦笑している。


「今回は自分の部屋で作ったんだけれどさ。やはり匂いが漏れていたか」

「悪い香りじゃ無いから問題無いのだ」


 食べるのは久しぶりだがやっぱり美味しい。

 炊き込み御飯とカレーの中間だけれどもっと奥深い違う料理。

 それに塩味のヨーグルトが良くあう。


 ただ以前、これを真似して作ってみたことがあったが上手く行かなかった。

 どうしてもあの香りが出ないのだ。

 単なるカレー風味の混ぜ御飯になってしまう。

 一応ネットのレシピ等も見て研究したのだけれども。

 やっぱりこれは川俣先輩に任せるのが正しいようだ。


「それにしても、野外活動の課外だと聞いたけれど、随分と色々食に拘っている気がするのだ。このビリヤニもそうだが、前にちょっといただいた海産物色々もそうなのだ。へたすると料理研究会よりいい物を食べているような気がするのだ」


「野外で美味しい物を食べるのも野外活動だし、野外で採取した物を美味しく調理するノ尾野外活動だからさ。ただ真冬になると流石に野外で食べ物採取も難しいけれどさ。それでも大雪の中テント張って中で皆で鍋食べるなんてするけどさ。寒いけれどあれもなかなか楽しいぞ」

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