第250話 銀杏の試食まで
「このように銀杏の実は強いアルカリ性です。ですから扱う際は必ずゴム手袋をして下さい」
「手袋をするのは臭いからじゃないんだ」
彩香さんがそんな事を言う。
「まあ臭いからというのもありますけれどね。そしてます、こうやって水の中で皮を剥いて、この中の硬い種部分を出します。今回は数が多いので、まずは種を出すところまでです。種を出したら外側部分はシンクの三角コーナーに、種部分はここに新聞紙を敷きましたのでその上に置いて下さい。次の段階で綺麗にしますので、まずは実を剥くだけです。ではどうぞ」
と言う訳で、何でもまずやってみたくなる美洋さんと未亜さん、それに亜里砂さんがゴム手袋をして剥き作業を開始する。
「この硬いのはどうすればいいですか」
「手で駄目ならそこに出しておいたプライヤーを使って下さい。本当はあと1日水に浸けたら大分楽になるのですけれどね。この匂いのものを部屋に置きっぱなしにはしたくないので」
何せ遠征して5人で拾いまくった銀杏だ。
なかなか無くならない。
なので僕と彩香さんも参戦。
とにかく剥いて、剥いて、剥いて……
匂いすら気にならなくなった頃、やっと全部を剥き終えた。
「それではシンクの中を一度片付けますよ」
剥いた外側をゴミ袋に入れて密閉する。
そして再びボールとカゴをセット。
中に水を入れながらさっき剥いた中身を投入した。
「次は仕上げ洗いの作業です。まだ実に外側の柔らかい部分がついていますので、それを洗って綺麗にします。水に浸けたままでもある程度は流れるのですが、ここは積極的に洗いに行きましょう。たわしを使った方が楽ですよ」
との事で。今度はゴシゴシと洗い作業。
洗った中身はまた水に浸けてと繰り返して。
「さあ、そろそろいいでしょう」
そう言って先生は水に浸かった種全体をゴロゴロかき混ぜて、何回かゆすいでゴミ部分を取って、そして実を新しい新聞の上に広げた。
「これで取り敢えず完成です。ただ折角ですから味見をしたいですよね」
うんうん、全員が頷く。
「そんな訳ですので取り敢えず少しずつ」
先生はそういいながら大きめの種を選んで茶封筒に入れる。
「これを電子レンジに入れて、強にして時間目一杯にして加熱します」
しばらくすると、バチッ、バチッという音がはじまった。
音が止んだところで先生は電子レンジを止める。
「これで完成です。取り敢えず熱いので気を付けて下さいね」
そう言って袋を開けて銀杏を新聞の上に出す。
硬い殻が割れていた。
「食べ過ぎると体に悪いしこれは試食ですから、今日は1人2個までですよ」
そんな訳で僕も1つ取ってみる。
割れたところに力をかけると殻は簡単に剥けて、黄緑色の実が出てきた。
お、これはホクホクしていて美味しい。
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