第249話 臭い匂いを処理しましょう

 結局この二日間。

 早朝はお散歩しながら銀杏拾い。

 お昼のお買い物には参加せず、歩いて15分程の図書館。

 夜はスーパーで安くなった食材漁りして御飯を作って。


 我ながら平和な二日間だったと思う。

 ただひとつの誤算は……


「これ、袋の上からも匂うような気がします……」


 銀杏だ。

 袋を5重にしているのにほのかに匂う。


「最近の買い物袋は通気性がいいのです……」


 未亜さんですらお手上げ状態。

 ディパックに匂いがつきそうだったので、紙袋に入れて僕が持つ。

 気のせいかもしれないけれど、電車の中の他からの視線が痛い。


「これ、袋の中で程良く蒸れて、余計に匂いを出していませんか」

「そうだとしても私達には何も出来ないのです」

 未亜さんの今の表情が全てを物語る。

 結局帰ってからも袋を開けることなく、そのまま僕の部屋のベランダへ。

 開封は翌日放課後という事になった。


 ◇◇◇


 準備室の換気扇は全開になっている。

 入口扉もその先の廊下の窓も開けてある。

 準備は万全の中、僕は重くて臭い紙袋をテーブルの上へ。


「これは……凄いな、色々な意味で」


 先輩が苦笑。

 そして先生は巨大サイズのボールとカゴを取り出して、シンクに置いた。


「まずはこの中に開けましょう」


 ボールに水を溜めえう。

 先生は更にハサミ、ゴム手袋いっぱい、よれたたわしを取り出した。


「このたわしはビーカーなどを洗うための物ですけれど、もうよれていて捨てていい奴ですから。心置きなく使って下さい」


 そういう事で、いつもの面子+亜里砂さんの前で、袋をハサミで切って開封。

 1枚袋を取るごとに濃度を増す臭気。

 しかも3枚目からは何か臭い液体が貯まっているし。


 そしていよいよ各自が銀杏を入れた買い物袋多数まで辿り着いた。

 酷い匂いの中、僕はゴム手袋をした状態で袋のひとつにハサミを入れ、中の銀杏をボール内のカゴに投入!

 十数袋の銀杏を全部ボールに入れて、汚染された袋をまとめてゴミ袋の中へ。

 ちょっとだけ匂いが遠のいた気もするが、多分気のせい。

 何せ匂いの本体がボールの中にいるから。

 袋の中で程良く熟れた感じで柔らかそうな感じになっている。


「あとはこの中の銀杏を剥くだけです。その前に川俣さん、いつもの」


「あいよ」

 川俣先輩は引き出しの中からリトマス試験紙を取りだした。

 溶けかかった感じの銀杏にぺとっ、とつける。

 紙がさっと青色になった。

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