第248話 早朝のくさい散歩

 朝4時30分。

 まだ暗い中、僕達は朝の散歩に出発した。

 予定より早くでた理由は簡単。

 美洋さんが待ちきれなかったからである。

 橋を渡り、遊園地を越えて、あの夜景を見たビルを越えてまだ先へ。


「なかなかいいところですね。明るくなったらまた来てみたいです」

「そこが赤煉瓦倉庫なのだ。でも今日の第1目的地はもう少し先なのだ」

 という訳でどんどん歩いて。

 30分くらい歩いただろうか。

 太陽こそ出ていないが大分明るくなってきた。

 そして古っぽい大きなビルが建ち並ぶ交差点で亜里砂さんは立ち止まる。


「ここから向こう側が有名なイチョウ並木なのだ」

 言われてみると確かに並木だ。


「道が広いので両側にわかれるですよ」

という事で。

 海を背に左側が未亜さん美洋さん。右が彩香さん亜里砂さんに僕という感じで。

 それぞれ信号が変わるとともに道を渡り、銀杏の捜索を開始する。

 最初はなかなかわからなかったが。


「あれ、これだよね」

 彩香さんが第一号を発見。

 それとともに目が慣れたのか、見えるようになった。


「これは大きいのだ」

「ここにもあった!」


 そんな感じで3人で競争するように取りまくる。

 1つの木には周囲に20個以上の実が落ちている。

 道路の終わり、縦浜公園前まで来た時には既にいい感じに一杯取れていた。


「さあ、次はここ縦浜公園を一周して探すですよ」

 未亜さんの号令で球場がある公園をぐるりと回って。

 こっちの方が木がちょっと少ないけれど、それでも時々大きい木があったりして。

 結果一周して元の通りに戻ったところで。

 ほぼ全員の持っている袋が重くなっていた。


「これならこの後、港下公園まで行かなくてもいいね」

「そうなのです。これ以上取ると持ち帰りが臭くて危険な気がするのです」

 という事で撤収宣言。

 ビニル袋をしっかり縛って持ち歩くのだけれど、心持ち匂いがする気がする。


「この匂い、服につかないよね」

「洗って干せば取れるとはネットに書いてあったのですが」

「お風呂入って服着替えて、お洗濯ですね」

「汁さえ付いていなければ大丈夫なのだ」


 そう。

 確かに匂う。

 臭い。


 マンションに帰って、買い物袋のビニールの上から更にゴミ用ビニール袋できっちり縛って、取り敢えずベランダに置いて。

 僕は取り敢えず自分の服を持って亜里砂さんの部屋に撤収した。

 何せ皆が服を脱いで匂いを嗅いでいる状態になったから。

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