第245話 今年はスダジイが豊作の筈です
「頭を使って糖分を消費しただろ。だから3時のおやつはきっちり甘い路線だ」
今度はホットケーキかな。
色が茶色くて、中にちょっとピーナツっぽいのが混じっている。
「ドングリのパンケーキだ。ドングリはナッツとしても使っているし粉としても混じっている。ジャムはすもも。スーパーで熟しすぎて安くなっていたのを買ってジャムにしてみた。バターと糖蜜も用意したから、適当に食べてくれ。
ドリンクはタンポポの根のコーヒー、そのままではちょっと土の香りがするから少し豆乳混ぜてみた。なんなら適当に甘くしてみてくれ」
なるほど。
パンケーキは焼いたばかりを持ってきたんだろう。
まだ温かい。
あまりパンケーキを食べた事はないが、香ばしいのがドングリ効果だろうか。
「このピーナツみたいなのもドングリなのですか」
「ああ。スダジイの実。しっかり煎ってあるからちょい固めかも」
「美味しいです。ピーナツと栗の中間みたいな感じです」
まさに美洋さんが言うとおりの味だ。
基本ピーナッツだけれどちょっと栗の甘みがある。
ドリンクは言われなければ普通の味。
よーく味わってみると、確かに遠くに土の香りがしないでもない程度。
甘くないミロ、というのが正しいかな。
ちなみにベジョータさんは糖蜜入れてかき混ぜて甘くしている。
「疲れた頭にちょうどいいのだ」
なるほど。
「去年はスダジイが不作でマテバシイが豊作だったからさ。今年はスダジイが豊作になると思う。何故かドングリは1年交替サイクルで豊作不作になるらしいからさ。去年は3回採取して大量に採ったけれど、なんやかんやで今日のパンケーキで全部使い果たした。今年はもっと採取して保存しておこうと思う」
「このパンケーキはどれ位ドングリを入れているのですか」
「ホットケーキの粉の半分くらいかな。粉のデンプンがなくなったのでスダジイのナッツをすりつぶして使った」
その割合が多いのか少ないのか僕にはわからない。
わかるのはこのパンケーキが確かに美味しいなという事くらいだ。
「そういうレシピとかはどうやって探すのですか」
「ネットとかに色々載っているぞ。食べられる野草とかも調理方法なんかもさ。勿論作ってみて失敗したのも色々あるけれどな。例えばシイ以外のドングリで餅を作ってみたら、青臭いし渋いし食べられない代物になったとか。アク抜きが上手く行かなかったんだな。まあそういう挑戦も含めて楽しいお遊びという事で」
未亜さんは頷きつつ、疑問を挟む。
「ただドングリの殻を剥くのはどうするのですか。大変だと思うのですよ」
先輩はそこでにやりと笑う。
「それに対するちょうどいい四文字熟語があってな、何だと思う」
何だろう。
「人海戦術、夜鍋仕事。皆で黙々とやるだけだ」
何か微妙に辛そうだ。
「女工哀史、まではいかないのですか」
未亜さんがとんでもない四字熟語?を出してくる。
「実は軽く熱通せば殻が割れるからさ。簡単ではあるんだ。数が多いだけで」
そういう事か。
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